葫芦島在留日本人大送還

葫芦島在留日本人大送還の背景と経過

終戦後、日本は多くの在外邦人を抱えていました。特に中国大陸、満洲には約170万人の日本人が留まっており、その多くが帰国を望んでいました。しかし、社会の混乱や現地住民の反感、またソ連軍の進攻によって、多くの日本人は危険な状況に置かれていました。

ソ連軍が進入してから日本人居留民は恐怖に晒され、退去を試みても暴徒による襲撃を受け、抵抗する者は命を落とす事例も多発しました。加えて、当時日本政府は外交機能が停止しており、民間人の帰国を保障する具体的な手段も途絶えていました。ポツダム宣言による武装解除と帰郷の保証はありましたが、民間人の引揚げは含まれておらず、現地政府の裁量次第だったのです。

日本政府は、財政状況や食糧不足の懸念から、在外邦人が帰国することに消極的でした。日本国内の食糧状況が厳しい中、引揚者が増えれば更なる食糧不足が心配されたため、むしろ現地での生活を継続することを推奨していたほどです。しかし、現地の日本資産は敵性資産として接収が進められ、事実上日本人の現地居住が不可能に近づいていきました。

こうした状況の中、中国国民党とアメリカは協力の下、在留日本人の帰国を進めることを決定しました。1945年10月、日本政府と中国国民政府間で民間人の帰還移送が合意され、1946年に入るとアメリカ軍の輸送本部が満洲に設けられました。この背景には、アメリカの意向が強く関与しており、日中両国はアメリカの方針に従わざるを得ない状況にありました。

引揚げの実施

1946年5月7日からは、葫芦島からの引揚げが始まり、同年末には101万7549人が日本へ送還されました。この輸送はアメリカ軍によって行われ、海上輸送においてはブリーガー作戦という名称が付けられました。アメリカは、南下するソ連軍を阻止するため国民党軍とも連携し、同時に在留日本人の帰国を進める役割を果たしました。彼らは中国東北部にあたる地域から、特に国民党が支配している葫芦島を拠点に帰還を実施しました。

帰還の際、日本人難民たちは一時的に虐待を受けることは無かったとされており、スムーズな状況が保たれていることが理由と言われています。一方で、帰国支援に向かった日本人がスパイ容疑をかけられ、拷問を受ける事例も存在しました。帰国が許された者は順次検閲を受け、その後日本へと向かいました。中には帰国できずにそのまま命を落とした者もおり、その多くは残留孤児となりました。

葫芦島の引揚げと文化的影響

葫芦島には「1050000日本僑俘遣返之地」という記念碑も建設されており、その後の歴史においてもこの帰還は重要な意味を持つこととなりました。もともと蒋介石の協力により、日本人の引揚げが進められたことは、両国の関係に後の文化的な影響を及ぼす要因の一つとなり、特に引揚者たちの体験は引揚げに対する社会的な関心を引き起こしました。

また、NHKの特集ドラマ『どこにもない国』が放映されるなど、時代を超えてこの問題は日本社会に影響を及ぼしており、歴史教育やメディアにおいても扱われ続けています。引揚げに関するさまざまな研究や書籍が出版され、今でも多くの人々に忘れ去られない歴史として語り続けられています。

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