葬送行進曲

葬送行進曲

葬送行進曲とは、葬儀において遺体を墓地まで搬送する際の行進を模して作曲された楽曲のことです。その荘厳で悲しげな旋律は、聴く人の心に深い哀愁を呼び起こします。

葬送行進曲の特徴

葬送行進曲は、一般的に以下の特徴を持ちます。

速度: やや遅めのテンポで演奏されます。
拍子: 2拍子で書かれることが多く、3分割されることは稀です。
調性: 死を連想させるため、明るい長調は避けられ、短調で作曲されるのが一般的です。

これらの要素が組み合わさることで、葬送行進曲は独特の陰鬱な雰囲気を醸し出し、葬儀の場にふさわしい音楽として機能します。

歴史と役割

葬送行進曲は、古くから葬儀の場で演奏されてきました。特定の人物の葬儀のために作曲された例は少ないものの、既存の楽曲が葬儀の場で使用されることは珍しくありません。特に著名人の葬儀では、吹奏楽団がショパンやベートーヴェンの葬送行進曲を演奏し、葬列を先導する光景も見られます。

主な葬送行進曲

以下に、代表的な葬送行進曲をいくつか紹介します。

ヘンデル: オラトリオ『サウル』HWV 53 - 第3幕の葬送行進曲
モーツァルト: フリーメイソンのための葬送音楽 K.477 (479a)
ベートーヴェン: ピアノソナタ第12番 - 第3楽章、交響曲第3番「英雄」 - 第2楽章
ショパン: ピアノソナタ第2番 - 第3楽章、葬送行進曲 ハ短調 Op.72-2
ベルリオーズ: 『ハムレット』の最後の場面のための葬送行進曲（合唱曲集『トリスティア』第3曲）、葬送と勝利の大交響曲 - 第1楽章
メンデルスゾーン: 劇付随音楽『夏の夜の夢』 - 葬送行進曲、無言歌集第5巻 - 第3曲「葬送行進曲」
グノー: 操り人形の葬送行進曲
アルカン: 独奏ピアノのための交響曲 Op.39-5 - 第2楽章
ワーグナー: ジークフリートの葬送行進曲（『神々の黄昏』第3幕）
グリーグ: リカール・ノールロークのための葬送行進曲
マーラー: 交響曲第1番 - 第3楽章、交響曲第2番 - 第1楽章、交響曲第5番 - 第1楽章
フォーレ: 葬送の歌（チェロソナタ第2番第2楽章に改作される）
エルガー: 劇付随音楽『グラーニアとディアーミッド』 - 葬送行進曲
エッケルト: 「哀之極」（かなしみのきわみ）（吹奏楽曲。大喪の礼に用いられる）
コダーイ: 「戦争とナポレオンの敗北」（オペラ・組曲『ハーリ・ヤーノシュ』）
ウォルトン: 映画『ハムレット』の音楽 - フィナーレ（葬送行進曲）
ブリテン: フランク・ブリッジの主題による変奏曲 - 第8変奏
ショスタコーヴィチ: 弦楽四重奏曲第15番 - 第5部

これらの楽曲は、作曲家の個性や時代背景を反映しており、それぞれ異なる感情や情景を表現しています。葬送行進曲を通して、人間の死に対する感情や文化的な背景を深く理解することができるでしょう。

関連項目

葬送音楽
葬送の歌
十字行

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