蔵原惟二

蔵原惟二（くらはら これつぐ）は、1935年7月15日に日本の東京で生まれた映画監督および映画プロデューサーです。彼は、同じく映画監督として知られる蔵原惟繕氏を実兄に持ち、詩人の蔵原伸二郎氏は叔父にあたるという、芸術にゆかりの深い家系に生まれました。

幼少期を東京の田園調布で過ごした後、高校時代は兵庫県神戸市で学びました。1958年には日本大学芸術学部を卒業。大学での学びを終えた後、映画界への道を志し、株式会社日活に入社しました。

日活では、まず助監督としてキャリアをスタートさせました。この時期には、後に監督として活躍する長谷部安春氏をはじめとする先輩たちの指導のもと、現場での実務経験を積み、映画制作のノウハウを深く習得しました。助監督として培った経験は、彼が後に監督として、そしてプロデューサーとして活躍する上での重要な基盤となりました。

長年の助監督経験を経て、1971年、蔵原惟二氏はついに監督としての第一歩を踏み出します。その監督第一作は『不良少女 魔子』でした。この作品は、当時の日活における一般向け映画制作体制の終盤に発表された作品の一つとしても知られています。監督デビューを果たした後、彼は1970年代を中心に、日活で精力的に監督作品を発表しました。

1971年には、監督デビュー作に続けて『セックス・ライダー 濡れたハイウェイ』を手掛けました。その後も、1973年に『セックス・ライダー 傷だらけの欲情』や『番格 女子高校生のSEXと暴力の実態』、1974年には『黒い牝豹M』を監督しています。これらの作品は、当時の日活が置かれていた状況を反映したものでした。

1976年には『性処女 ひと夏の経験』、1977年には『ホテル強制わいせつ事件 犯して!』と『エロス学園 感度ばつぐん』、そして1978年には『20歳の性白書 のけぞる』といった作品を次々と発表し、監督としてのキャリアを重ねました。日活での活動の傍ら、または退社後に、他の製作体制での作品も手掛けており、1980年には日本テレビと東宝東和の共同製作によるドキュメンタリー映画『象物語』の監督を務めるなど、活動の幅を広げました。

日活を退社した後、蔵原惟二氏は実兄である蔵原惟繕氏と共に、自身の名を冠した蔵原プロダクションを設立しました。プロダクションでは、主にプロデューサーとして、映画の企画・製作を主導する立場に移りました。プロデューサーとしては、1983年に公開され、社会現象となるほどの大ヒットを記録した映画『南極物語』を手掛けたことが特筆されます。この作品は、厳しい自然の中で生き抜くタロとジロをはじめとする南極観測犬の姿を描き、多くの人々の感動を呼びました。

蔵原惟二氏は、日活で監督として多様なジャンルの作品に携わった経験と、蔵原プロダクション設立後のプロデューサーとしての手腕を通じて、日本の映画界において監督とプロデューサーの両面から重要な役割を果たしました。実兄・惟繕氏との協業や、芸術家を輩出する家系に生まれた背景も、彼の映画人生に少なからず影響を与えていると考えられます。多岐にわたる活動を通じて、日本の映画史にその名を刻んでいます。

もう一度検索