蔵春閣 (長野市)

蔵春閣：長野市の歴史を彩った二つの公会堂

長野市東之門町に位置し、善光寺や城山公園にほど近い場所に、かつて「蔵春閣（ぞうしゅんかく）」という名の公会堂が存在しました。この名称を持つ建物は二つあり、それぞれが異なる時代に、異なる役割を果たしました。

初代蔵春閣：木造建築の歴史

1908年、最初の蔵春閣は木造建築として誕生しました。その起源は、1886年に地元の有志によって建設された「城山館」に遡ります。長野市が市制を敷いた後の1898年、この城山館は市に買収され、公会堂として利用されるようになりました。

1908年、城山で一府十県連合共進会が開催されることになり、その際、貴賓接待用の施設として「城山館東館」が建設されました。これが、後に「蔵春閣」と呼ばれるようになった建物です。当時の蔵春閣は205坪から210坪の広さを誇り、大正時代には演説会や音楽会など、市民の文化活動の場として頻繁に利用されました。

しかし、初代蔵春閣は1949年2月6日の火災により、隣接する城山館とともに焼失してしまいました。長きにわたり市民に親しまれてきた建物は、その歴史に幕を閉じたのです。

二代目蔵春閣：鉄筋コンクリート造りの再建

初代蔵春閣の焼失から約20年後の1966年、長野市の市制70周年記念事業の一環として、蔵春閣の再建が決定しました。そして、1967年5月2日、二代目蔵春閣が鉄筋コンクリート造りの4階建てとして完成しました。

新しい蔵春閣は、結婚式場としても利用されるなど、市民の様々なニーズに応える施設として活用されました。しかし、時代の流れとともに利用者は減少し、雨漏りなどの老朽化も目立つようになりました。

1998年には廃止も検討されましたが、1階のホールがダンスサークルなどに人気があり、「あと10年は使える」との判断から、当面の使用が決定されました。その後、2006年からは城山公民館別館という位置づけとなり、その役割を担いました。しかし、雨漏りの悪化や、非常階段のコンクリート剥落など、老朽化が深刻化したため、最終的に閉館という決断に至りました。

閉館と再整備計画

2018年1月、蔵春閣の歴史を振り返る催し「さよなら、蔵春閣」が開催され、多くの市民が別れを惜しみました。そして、同年3月31日、蔵春閣は正式に閉館しました。現在、建物は城山公園の再整備計画の一環として、時期は未定ながら解体されることが決定しています。

蔵春閣は、その名称を変えながらも、長野市の歴史と文化を育んできた重要な施設でした。二つの蔵春閣は、それぞれ異なる時代に、市民の生活に深く根ざし、多くの人々の思い出の中に生き続けています。



参考資料
長野市 城山公園の再整備基本構想
長野市公文書館便りvol.34

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