蔵王観光ホテル火災

蔵王観光ホテル火災の概要

1983年2月21日未明、山形県山形市蔵王温泉の蔵王観光ホテルで発生した火災は、死者11名、負傷者2名を出す大惨事となりました。この火災で、ホテルは全焼し、隣接する旅館7棟も類焼の被害を受けました。

火災発生の背景

蔵王観光ホテルは、1920年代に建てられた木造4階建てのホテルで、施設の老朽化が進んでいました。増築を重ねた結果、館内は複雑な構造になっており、避難経路も分かりにくい状況でした。火災発生前には、自動火災報知機が誤作動を繰り返していたため、従業員がシステムを停止させていたことも、被害を拡大させる一因となりました。

火災発生と被害状況

火災は、午前3時頃、本館2階のトイレにあった電気ストーブから出火しました。折からの強風にあおられ、火は瞬く間に燃え広がり、ホテル全体を炎と煙で包みました。当時、ホテルには99名の宿泊客がいましたが、停電により避難を促す放送もできず、従業員による避難誘導も徹底されませんでした。その結果、多くの宿泊客が逃げ場を失い、一酸化炭素中毒で倒れてしまいました。犠牲者の多くは本館内で発見され、1階の配膳室付近や2階の食堂横のトイレ付近で倒れているのが確認されています。また、3階の客室では布団に入ったまま亡くなっている方もいました。従業員の中にも、宿泊客の避難誘導中に逃げ遅れた犠牲者がいました。

消防活動の難航

豪雪と吹雪の中、消防隊の到着は遅れ、消火活動も困難を極めました。ホテルのある場所は高台の傾斜地で足場が悪く、気温も氷点下7℃と非常に低かったため、道路や消火用水も凍結していました。これにより、放水も思うようにできず、火は周辺の旅館にも燃え移り、被害を拡大させてしまいました。

火災後の影響

火災により、蔵王観光ホテルは廃業に追い込まれ、建物は取り壊されました。ホテル跡地には、火災で焼失した海老屋旅館が再建され、別の場所には山形屋旅館が建てられました。また、同じく全焼した柏屋旅館は再建されず、廃業となりました。柏屋旅館跡地の一部には、後に蔵王プラザホテルと社員寮が建てられ、社員寮に火災事故の慰霊碑が建立されました。

刑事責任

ホテル経営者は、業務上過失致死傷罪で逮捕され、禁錮2年執行猶予3年の有罪判決を受けました。

教訓と反省

この火災は、老朽化した施設におけるずさんな管理体制が、いかに甚大な被害をもたらすかを教える教訓となりました。自動火災報知機の誤作動を放置したこと、避難誘導が徹底されなかったこと、そして、消火活動の遅れなど、多くの問題点が浮き彫りになりました。また、災害時には、避難経路の確保や避難誘導の徹底、初期消火の重要性を改めて認識させられる出来事となりました。

関連情報

• - 磐光ホテル火災: 本件同様、吹雪で消火活動が難航した火災事例。
• - 外部リンク: 消防防災博物館の特異火災事例、サンコー防災株式会社のホテル・旅館火災の特徴と事例で、本件火災について詳しく解説されています。

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