蔵米知行

蔵米知行（くらまいちぎょう）とは

蔵米知行は、江戸時代に武士に与えられた俸禄制度の一つで、蔵米給与とも呼ばれます。これは、主君である江戸幕府や藩が家臣に対して、知行地の代わりに蔵米を俸禄として支給する制度です。この制度のもとで蔵米を受け取っていた家臣は、蔵米取（くらまいどり）と呼ばれていました。

ただし、蔵米知行には名目上の知行高を持ちながら、実際にはその知行高に一定の割合を掛けた額が支給される場合もありました。また、蔵米取は実際の手取額のみが明示される場合もあり、これらの両者を合わせて俸禄制と称することもあります。

蔵米知行の背景

本来、武士の俸禄は、主君が家臣に領地の一部を知行地として与える地方知行が基本でした。しかし、江戸時代中期頃から、以下のような理由により、蔵米知行へと移行する動きが広がりました。

土地支配権力の集中: 主君である将軍や大名への土地支配権力が強まり、家臣への知行地分配が抑制されるようになりました。
財政上の都合: 藩の中央と家臣が年貢米を売却する際に競合し、米価が下落しました。これにより、換金収入が減少し、藩の財政が厳しくなりました。そこで、藩は年貢米を直接家臣に支給する蔵米知行に切り替えることで、財政を安定させようとしました。
地方知行の不便さ: 家臣が城下町に居住することが一般的になると、知行地が遠隔地にある場合や、複数の村に分散している場合には、災害時の損失や収入の不安定さが問題となりました。蔵米知行は、これらの不便さを解消する手段となりました。

蔵米知行の仕組み

当初、蔵米は直接家臣に渡されていましたが、その後、札差が公定価格で米を引き取り、手数料を差し引いた代金を家臣に渡す方式が主流となりました。札差は、米の換金や代金支払いなどの業務を代行し、武士の生活を支えました。

蔵米知行の終焉

明治2年（1869年）の版籍奉還によって、大名も含めた全ての地方知行が廃止され、蔵米知行のみとなりました。しかし、それも明治9年（1876年）の秩禄処分によって完全に廃止され、武士の俸禄制度は終わりを告げました。

関連項目

地方知行
蔵米
札差
借知
サラリーマン

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