薩摩土手

薩摩土手（さつまどて）について

薩摩土手または駿府御囲堤は、静岡県静岡市葵区に位置する、江戸時代初期に造られた堤防です。この土手は、徳川家康が安倍川の氾濫から駿府市街を守るために築かれました。興味深いことに、名に「薩摩」とあることから、薩摩藩がこの土手の築造に関与したとの伝承がありますが、具体的な証拠は確認されていません。

歴史的背景

家康は征夷大将軍職を息子の徳川秀忠に譲り、大御所として静岡地域の治水・防災工事を進めました。1616年（慶長11年）ごろに始まった駿府城の拡張や安倍川の治水工事の一環として、この堤防が築かれました。形状は、雁の編隊のように見えることから、「雁行性堰堤」と呼ばれています。

薩摩藩主の島津忠恒によって多くの石材や木材が運ばれ、この土手が築かれたという伝承が広まっていますが、実際に島津家の関与を示す資料は存在しないため、伝説の域を出ていません。

堤防の構造

この堤防は、賤機山西側の山麓から始まり、下流に向かって造られており、井宮妙見神社の山裾から南西方向に延びています。堤防は高さ約5.4メートル、全長約4キロメートルに及びます。下流の部分は、「さつま通り」として知られる道路に転用されているものの、上流区間は現在でも機能的な堤防として残っており、地域の防災に寄与しています。

2017年には、公益社団法人土木学会によって土木遺産に認定され、その重要性が再認識されました。

現在の薩摩土手

薩摩土手は、静岡市の歴史的な地域において重要な遺構として多くの人々に親しまれています。観光客や地元住民にとっても、文化や歴史を感じるための場所となっており、地元のイベントや活動の舞台として利用されることもあります。堤防周辺の自然環境も保全されており、訪れる人々がその美しい風景を楽しむことができるよう工夫されています。

このように、薩摩土手はただの堤防ではなく、地域の歴史を物語る重要な文化資産であることが感じられます。

参考文献

• - 森 威史「駿府囲堤築造考～いわゆる薩摩土手の築堤について～」『地方史静岡』第22号 地方史静岡刊行会編 1994年（平成6年）3月
• - 土木学会中部支部選考委員会「中部地方の選奨土木遺産・駿府御囲堤（薩摩土手）」(PDF) 2017年（平成29年）
• - 薩摩土手 -ふじの国文化資源データベース

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