大御所
大御所とは
「大御所」（おおごしょ）とは、隠居した親王、摂政・関白の実父、武家政権における隠居した征夷大将軍や現任の将軍の実父に対する尊称です。この言葉は、古代から利用されており、その用法や意味は時代を経るごとに変化してきました。
歴史的背景
「大御所」という語は、元々は天皇の居所を指す「おほみもと」に起源があります。その後、親王の隠居所である御所を指すようになり、最終的には実際に隠居した親王に対する尊称として用いられるようになりました。この用法は『康富記』の1442年に見られます。この時期には、隠居した親王だけでなく、摂政や関白の実父に対してもこの言葉が適用されていました。
鎌倉時代には、編纂物『吾妻鏡』に、前将軍の源頼朝の御所である「大御所」に向かう北条政子に仕える様子が描かれています。この記録からも、「大御所」という称呼が、前将軍の居所に対する特別な言葉として用いられていたことがわかります。また、藤原頼経が将軍職を息子に譲った際には「大殿」と称されており、これはその時代の権力の象徴とも言えます。
室町時代には、足利幕府における将軍たちの実父らも「大御所」と呼ばれるようになりました。足利義満や足利義政など、名だたる将軍たちの名前がここに挙がります。
江戸幕府における大御所
江戸時代に入ると、徳川幕府の初代将軍である徳川家康が将軍職を徳川秀忠に譲った後、彼自身が「大御所」となりました。家康は駿府城に移り、事実上の二頭政治を推進しました。秀忠もまた、将軍職を徳川家光に譲った後に江戸城の西の丸に移り、大御所として政務を行いました。
この時期には、8代将軍徳川吉宗や9代将軍徳川家重、11代将軍徳川家斉など、将軍経験者たちが「大御所」としての地位を持ち続けました。家斉は特に長期間にわたり将軍職を務め、その後も大御所として権力を維持し続けたため、この時代は「大御所時代」と呼ばれています。しかし、家斉が実父の徳川治済を大御所としようとした際には、松平定信の反対によりその計画は実現しませんでした。
現代における使用法
今日でも「大御所」という言葉はよく使われています。これは、特定の分野で長い経験や大きな功績を持つ人物に対して付けられる称号のようなもので、政界や芸能界などの著名な存在に対して「政界の大御所」「芸能界の大御所」といった表現が一般的です。類義語には「元老」があり、いずれも権威のある位置にいる人物を指します。これにより、「大御所」はただの称号である以上に、その人の影響力や尊敬の度合いを示す重要な言葉となっています。
参考文献
関連項目
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