薩摩治郎八

薩摩治郎八について

薩摩治郎八（さつま じろはち）は、1901年4月13日に生まれ、1976年2月22日に亡くなった日本の著作家です。彼は戦前、大富豪として名を馳せ、フランスでの派手な生活から「バロン薩摩」と称されました。彼の一生は、富と文化への貢献、そして波乱に満ちた出来事で彩られています。

生い立ち

治郎八は東京の日本橋に生まれました。祖父は「木綿王」と呼ばれる薩摩治兵衛で、父は2代目薩摩治兵衛でした。彼は1920年に第一次世界大戦後のイギリスのオックスフォード大学に留学し、ギリシャ演劇を学びました。この頃、アラビアのロレンスとして知られるトーマス・エドワード・ロレンスや藤原義江などの著名人と交流を持ちました。1922年にはフランスのパリに移り住み、贅沢な生活を始めました。

バロン薩摩

パリでは、治郎八は実家から受け継いだ膨大な資金を使って、16区の高級住宅街に豪華な住居を建て、カンヌやドーヴィルのリゾート地を訪れる生活を送りました。彼はイサドラ・ダンカンやジャン・コクトーなど著名なアーティストとの親交を深め、特注のクライスラー・インペリアルでニースのコンクール・デレガンスに参加し優勝するなど、社交界での地位を築きました。その派手な振る舞いから爵位がなかったにもかかわらず、「バロン」という称号で呼ばれるようになりました。

文化貢献

治郎八は自身の富を使って、当時パリで活動していた日本人芸術家たちを多大に支援しました。彼は藤田嗣治、高崎剛、高野三三男といった画家たちと関わる一方、美術や音楽、演劇に対する支援を怠りませんでした。1929年にはフランス政府が呼びかけた国際学生宿舎の建設に、関東大震災後の資金不足を理由に日本政府が出資を断ったため、自ら総工費2億円を全額出資し「日本館」を建設しました。この功績が評価され、後にフランス政府からレジオンドヌール勲章を受けることとなります。日本館は「薩摩館」としても知られています。

第二次世界大戦

1939年、第二次世界大戦が勃発すると、治郎八は占領下のパリに留まりました。彼は多くの在仏日本人が帰国できない状況の中でも、その地に留まる道を選びました。戦争中、彼はフランスの上流社会とのつながりを保ち、政治的な行動を行わなかったため、連合国軍からの迫害を受けることもありませんでした。

1945年、日本が連合国に敗北すると、戦後の復興が進むなかで、無一文で日本に帰国しました。彼の著作活動は再び始まり、日仏間の親善活動にも力を入れました。彼は自ら企画した日仏プロ自転車競技大会を通じて多くの交流を持ち、往年の人脈を生かして活躍しました。

死去

1959年、徳島県を訪れた際に脳卒中で倒れ、療養の後1976年に亡くなりました。彼の生涯は豪華な生活と文化への深い理解で彩られ、1988年にはその功績を称える展覧会が徳島県立近代美術館で開催されました。治郎八は「バロン薩摩」としての名声を確立し、数々の著作を残し、長い間日本とフランスの文化交流に寄与し続けました。

家族

1926年に結婚した妻・千代が1949年に亡くなった後、1956年に再婚した真鍋利子との生活も注目されています。治郎八の人生は、彼自身が築いた華やかな活動と文化貢献によって、今日の視点から見ても多くの人に影響を与え続けています。

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