藤井高尚

藤井 高尚の生涯と業績

藤井高尚（ふじい たかなお、1764年 - 1840年）は、江戸時代後期の国学者、歌人、神官として知られる。彼は本居宣長の門人であり、国学と和歌の分野で卓越した才能を発揮した。

生い立ちと教育

藤井高尚は、岡山県の吉備津神社の祠官である高久と小春の子供として生まれた。彼は幼名を忠之丞と名付けられ、通称は小膳、号は松斎と呼ばれた。年齢を重ねるにつれ、父の後を継ぎ、地元の宮司としての職務を果たした。彼は正五位下の長門守に任命され、備中の宮内に住んでいた。

少年時代、高尚は備中笠岡の小寺清先から国学を学び、京都では栂井道敏に和歌を学んだ。特に、寛政5年（1793年）には本居宣長に入門し、『源氏物語』について質問を重ねることで、彼の主要な門弟の一人となる。

貢献と影響

藤井高尚は歌文の学問に秀でており、中古の文体における才覚が認められた。宣長の死後、高尚は鈴屋学派の重要な指導者として、国学の普及に大いに貢献した。彼はしばしば京都や大坂に出向き、鉄舎や小柴屋で教えることで、多くの門弟を育てた。彼の門弟には東条義門や業合大枝、正宗直胤など数多くの有名な学者がいる。また、備中松山藩士の平田篤穏とも交流があり、晩年の影響力を広めた。

享年77歳で亡くなった藤井高尚の墓は岡山市北区の千日墓地にある。1915年には、死後に正五位を追贈された。

著作

藤井高尚の著書は多岐にわたる。彼が遺した文献は15部35巻にも及び、特に『三のしるべ』（1826年刊）が有名である。この書籍は、古道論を展開する上巻「道のしるべ」、歌について論じる中巻「歌のしるべ」、そして下巻「ふみのしるべ」が含まれる。歌論においては、本居宣長の「物のあはれ」説を引き継ぎながら、小沢蘆庵の「ただこと」論に対しては反論する姿勢を示した。

他にも、注釈書『伊勢物語新釈』や『大祓詞後々釈』、神道や国史、国文に関する随筆『松の落葉』、『松屋文集』、自選歌集『松屋自選歌集』、更には『神の御蔭の日記』や『消息文例』、源氏物語の注釈『日本紀の御局考』、『おくれし雁』など、多数の著作を残している。

これらの業績により、藤井高尚は国学の重要な奠基者であり、日本文学におけるすぐれた影響を与えた人物と見なされている。

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