小沢蘆庵

小沢蘆庵（おざわ ろあん）は、享保8年（1723年）に生まれ、享和元年7月11日（1801年8月19日）に没した江戸時代中期の歌人・国学者です。本名は玄仲（はるなか）または玄沖といい、通称は帯刀、別号として観荷堂、図南亭、孤鴎、七十童、八九童などを名乗りました。法号は寂照院月江蘆庵居士です。

蘆庵は難波（現在の大阪市）で生まれ、後に京都に住みました。父は小沢喜八郎実郡（さねくに）といい、一時、本庄家に養子に入り本庄八郎と称した時期もありました。

歌人としては、平安和歌四天王の一人に数えられています。30歳頃に冷泉為村（れいぜい ためむら）に入門し、武者小路実岳（むしゃのこうじ さねたけ）にも学びましたが、従来の歌学に飽き足らず、独自の歌学を提唱し「ただごと歌」を主張したため、為村から破門されました。この「ただごと歌」は、技巧に偏重せず、日常の素直な感情を歌に表現することを重視するものでした。

国学者としては、尊王論を唱えました。また、伴蒿蹊（ばん こうけい）、本居宣長（もとおり のりなが）、上田秋成（うえだ あきなり）、蒲生君平（がもう くんぺい）など、当時の著名な学者や文化人と幅広く交流しました。これらの交流を通じて、蘆庵の思想は深まり、その後の活動に大きな影響を与えたと考えられます。

武士としては、尾張藩家老の家臣という身分であり、その立場から国学の研究を進め、尊王思想を深めていったと考えられます。彼の学問は、単なる趣味や教養にとどまらず、社会や政治に対する意識と深く結びついていたことがうかがえます。

小沢蘆庵は、歌人、国学者として、また思想家として、多岐にわたる分野で才能を発揮し、江戸時代中期に独自の足跡を残しました。彼の業績は、現代においても高く評価されており、日本の文化史における重要な人物の一人として記憶されています。

関連項目

和歌四天王
森田豊香

もう一度検索