藤原章生

藤原章生（ふじわら あきお）は、1961年福島県いわき市に生まれ、東京都で育ちました。東京都立上野高等学校を経て北海道大学工学部を卒業後、住友金属鉱山に入社。その後、ジャーナリズムの世界へと転身し、1989年に毎日新聞社に入社しました。

ジャーナリストとしてのキャリアは、長野支局から始まり、1992年からは外信部へ。ヨハネスブルグ特派員（1995年〜2001年）、メキシコシティ支局長（2002年〜2006年）、ローマ支局長（2008年〜）など、海外の要衝を歴任し、国際的な視点と卓越した取材力を培いました。2012年からは本社夕刊編集部、2013年からは郡山支局長を経て、2014年から本社編集委員（地方部兼デジタル報道センター）を務め、2021年3月に定年退職。現在は契約記者として活躍しています。

藤原のノンフィクション作家としての活動は、海外特派員としての経験を活かし、国際社会の複雑な問題に焦点を当てた作品が特徴です。2005年には、アフリカを舞台にした短編集『絵はがきにされた少年』（後に『遠い地平』を改題）で、第3回集英社開高健ノンフィクション賞を受賞。この作品は、アフリカの現実を深く掘り下げ、読者に強い印象を与えました。

代表的な著書には、『ガルシア＝マルケスに葬られた女』(2007年)、『ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く』(2010年)、『資本主義の「終わりのはじまり」』(2012年)、『湯川博士、原爆投下を知っていたのですか』(2015年)、『ぶらっとヒマラヤ』(2021年)、『酔いどれクライマー永田東一郎物語　80年代ある東大生の輝き』(2023年)、『差別の教室』（2023年）などがあり、社会問題や歴史、人物に迫る幅広いテーマで執筆活動を行っています。特に、『湯川博士、原爆投下を知っていたのですか』では、日本の物理学者・湯川秀樹と原爆の関係に迫り、歴史の真相を問い直しました。

毎日新聞社のウェブサイトでは、特集ワイド面のアーカイブや、連載記事『大衆作家・ガルシア＝マルケス』、『藤原章生のぶらっとヒマラヤ』、『酔いどれクライマー永田東一郎伝』、『イマジン〜チリの息子と考えた』などが公開されており、これらの記事からも藤原の多岐にわたる関心と、深い洞察力を垣間見ることができます。

また、「WEDGE Infinity」ではコラム「コラムの時代の愛―辺境の声―」、社会福祉法人東京ヘレン・ケラー協会発行の点字月刊誌「点字ジャーナル」ではコラム「自分が変わること」を連載しており、活発な執筆活動を続けています。

藤原のジャーナリストとしての功績で特に注目されるのは、ピューリッツァー賞を受賞した写真『ハゲワシと少女』の背景に対する指摘です。彼は、写真が撮影された現場にいた別のカメラマンの証言をもとに、写真の背景にある状況を検証し、メディアが伝えていたイメージとは異なる側面を明らかにしました。この調査は、写真報道の倫理的な問題や、メディアが情報を伝える際の責任について、改めて問いかけるものでした。

さらに、イラク戦争におけるクラスター爆弾の被害者遺族を取材し、戦争の悲惨な実態を世界に伝えました。また、ノーベル文学賞作家、ガブリエル・ガルシア＝マルケスの作品『予告された殺人の記録』のモデルとなった女性、マルガリータ・チーカの実像に迫り、作品の背景にある人間関係を解き明かすなど、文学作品に対する深い理解と、取材力を発揮しました。

しかしながら、2014年には自民党県連幹部に関する記事で、事実誤認と悪意ともとれる表現があったとして謝罪・訂正するという出来事もありました。この件は、ジャーナリズムにおける事実確認の重要性や、表現のあり方について、議論を呼ぶこととなりました。

藤原章生は、ジャーナリスト、ノンフィクション作家として、国際社会の様々な問題に積極的に関わり、独自の視点と鋭い洞察力で、読者に深い思索を促し続けています。

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