藤原采女亮政之

藤原采女亮政之：日本の理美容業の祖

藤原采女亮政之（ふじわら うねめのすけ まさゆき）は、鎌倉時代に活躍した人物で、日本の理美容業の祖として知られています。生年は1335年とされ、没年は諸説ありますが、理美容業界ではその功績を称え、長くその命日を休業日とする風習がありました。

生涯

采女亮政之は、藤原鎌足の子孫である藤原晴基（または基晴）の三男として京都に生まれました。父・晴基は、亀山天皇の時代に京都御所の警備役を務めていましたが、宝刀を紛失した責任を取り浪人となります。采女亮は、父と共に宝刀探索の旅に出ますが、その過程で理美容業との深い関わりを持つことになります。

文永5年（1268年）、晴基は宝刀が国外に流出するのを防ぐため、朝鮮半島に近い下関に移り住みます。そこで、親子は髪結職で高い収入を得ていた新羅人に技術を学び、亀山八幡宮裏に髪結所を開業します。この店には亀山天皇を祀る祭壇があったことから、「床屋」と呼ばれるようになったと言われています。

弘安1年（1278年）に晴基が亡くなった後、采女亮は弘安4年（1281年）に鎌倉に移り住み、そこで髪結いの技術をさらに磨き、幕府に重宝される存在となりました。建武2年（1335年）に亡くなるまで、その技術は高く評価され続けたと伝えられています。

理美容業の祖としての根拠

采女亮が理美容業の祖とされる根拠は、江戸時代から各地に伝えられている「一銭職分由緒書」という史料にあります。この史料には、「三男・采女亮政之とともに下関に居を構え、髪結業を営み、これが髪結職の始めなり」と記されており、采女亮が日本の理美容業の先駆けであったことが示唆されています。

また、采女亮の子孫は代々髪結を業としており、徳川家康が武田信玄に敗れた際、17代目の北小路藤七郎が家康を助けたことから、褒美として銀銭一銭を賜り、「一銭職」と呼ばれるようになったという逸話も残っています。

采女亮を祀る場所

現在も、采女亮を祀る場所がいくつか存在します。

信州 善光寺の石碑： 明治30年（1897年）に長野理容組合によって建立された石碑。理容遺産第1号にも認定されています。
京都嵯峨 御髪神社： 昭和36年（1961年）に創建された神社。采女亮を祀っており、春と秋に大祭が執り行われます。
下関 「床屋発祥の地」記念碑： 平成7年（1995年）に建立された記念碑。毎年、毛髪供養祭が開かれています。
采女亮の墓： 東京都文京区の西信寺にあります。顕彰碑も建立されています。
髪授神祠： 香川県高松市に鎮座する祠。采女亮と飽昨能宇斯神を祀っています。全国理容遺産にも登録されています。

これらの場所は、采女亮の功績を偲び、理美容業の発展を祈願する人々にとって、重要な場所となっています。

関連文献

采女亮に関する研究は、以下の文献でさらに詳しく知ることができます。

『日本の理髪風俗』（風俗文化史選書、雄山閣出版、1972年9月）坂口茂樹著
* 『床屋の歴史にロマンを求めて : 床屋の発祥地は下関』（海虹 2000年7月）小野孝策著

これらの文献を通じて、采女亮の生涯や理美容業の歴史について、より深く理解を深めることができるでしょう。

藤原采女亮政之は、日本の理美容業の礎を築いた人物として、その名は後世にまで語り継がれています。彼の功績は、現代の理美容業界においても、深く敬意を払われています。

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