藤富保男

藤富保男：言葉とユーモア、そして多様な才能

藤富保男（ふじとみ やすお、1928年8月15日 - 2017年9月1日）は、東京府小石川区（現・文京区）に生まれ、詩人として独自の足跡を残しました。彼の詩は、視覚と音律に着目し、日常言語を再構築する実験的な試みによって特徴づけられています。ユーモラスな作風は多くの読者を魅了し、30冊を超える詩集を通してその世界観を表現しました。

生涯と詩への道

藤富は獨逸学協会中学（現・獨協高等学校）、東京外国語大学モンゴル語学科を卒業後、詩誌『gui』の同人として活動を開始。1950年には北川冬彦の詩会「時間」に参加し、詩の世界に足を踏み入れます。カミングス研究会では新国誠一と出会い、共に芸術研究協会(ASA)を設立。詩的な実験を重ね、独自の詩法を確立していきました。

彼の詩は、言葉の響きや視覚的なイメージを重視し、日常的な言葉を新たな角度から捉え直すことで、読者に新鮮な驚きとユーモアを提供します。代表作には『コルクの皿』『正確な曖昧』『新聞紙とトマト』などがあり、これらの作品を通して、藤富ならではの詩の世界を堪能することができます。

多彩な才能

藤富保男は詩人としての活動にとどまらず、翻訳や編著にも力を注ぎました。特に、カミングスの詩集の翻訳は、日本の読者にカミングスの詩を紹介する上で重要な役割を果たしました。また、『谷川俊太郎』(日本の詩)の編纂など、日本の現代詩の普及にも貢献しています。

さらに、藤富はサッカーにも造詣が深く、アマチュアチームの指導者や、実業団や関東大学リーグの審判を務めた経験を持ちます。詩作とスポーツという一見異なる分野で才能を発揮したことは、彼の多才さを示すエピソードと言えるでしょう。

死と遺産

2017年9月1日、藤富保男は転移性骨腫瘍のため89歳で逝去しました。彼の死は、日本の現代詩の世界にとって大きな損失であり、多くの人々がその才能を惜しみました。しかし、彼の作品は今もなお読み継がれ、多くの人々に影響を与え続けています。

矢野顕子は藤富保男の詩「非」に旋律を付し、「一分間」というタイトルの楽曲にしました。この曲はアルバム『峠のわが家』に収録されており、彼の詩が音楽という形で新たな命を与えられたことを示しています。

藤富保男は、詩人として、翻訳家として、そしてスポーツマンとして、多岐にわたる分野で才能を発揮し、豊かな人生を送りました。彼の作品は、これからも多くの人々に愛され、読み継がれていくことでしょう。

主な著書

『コルクの皿』（1953年）
『正確な曖昧』（1961年）
『藤富保男詩集』現代詩文庫（1973年）
『やぶにらみ』（1992年）
『文字の正しい迷い方』（1996年）
『第二の男』（2000年）
『藤富保男詩集全景』（2008年）
『詩の窓』（2011年）
* 『一壺天』（2014年）

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