藤戸饅頭

藤戸饅頭：源平の古戦場から生まれた、倉敷の銘菓

岡山県倉敷市藤戸町に伝わる銘菓「藤戸饅頭」。酒粕入りの優しい甘さの生地で包まれたこしあんの風味が特徴の、歴史と伝統が息づく和菓子です。その独特の味わいと、短い消費期限が特徴的な、地元で愛される一品です。

ふっくらとした優しい甘さの秘密

藤戸饅頭は、地元産の麹を使った酒粕を発酵させた甘酒を生地に練り込むことで、独特の風味とふっくらとした食感を生み出しています。厳選された小豆のこしあんとの相性も抜群で、上品な甘さが口の中に広がります。この繊細な味わいは、長年受け継がれてきた伝統の技と、地元の素材へのこだわりによって支えられています。

源平合戦と深く関わる歴史

藤戸饅頭の歴史は、源平合戦の古戦場である藤戸の渡しにまで遡ります。1184年、源氏軍の佐々木盛綱が藤戸の浅瀬を駆け抜け、平家軍を破ったという伝説が残されています。この戦いを終えた後、戦没者の供養として藤戸寺で饅頭が供えられたことが、藤戸饅頭の起源とされています。ただし、現在の藤戸饅頭が作られるようになったのは1860年（万延元年）とされており、歴史の深さと伝統の重みを感じさせます。

倉敷を代表する銘菓としての地位

藤戸饅頭は、倉敷市を代表する銘菓として、地元住民に広く親しまれています。その知名度は、岡山市の名物「大手まんじゅう」と比較されることも多く、見た目や味がよく似ていることから混同されることもありますが、藤戸饅頭の方が歴史は古く、独特の風味と短い賞味期限（3日程度）が特徴です。大手まんじゅうの賞味期限が約1週間であることを考えると、この短い消費期限は、新鮮な素材と伝統製法へのこだわりを象徴していると言えるでしょう。

藤戸饅頭本舗：伝統を守り続ける老舗

藤戸饅頭を製造・販売しているのは、「藤戸饅頭本舗」です。藤戸寺近くの古風な町並みに佇む本店は、江戸時代から続く歴史を感じさせる建物で、映画『ALWAYS三丁目の夕日』のロケ地にも使用されたほどです。現在では、本店以外にも倉敷駅構内や市内の大型スーパーマーケットなどで販売されており、多くの人々に親しまれています。また、古くから使用されているCMソングは岡山県内では非常に有名で、ホームページでも聴くことができます。

地域と歴史が育んだ、珠玉の和菓子

藤戸饅頭は、単なる和菓子ではなく、源平合戦の歴史、地元の素材へのこだわり、そして伝統を守り続ける職人たちの技が凝縮された、まさに「倉敷の宝物」と言えるでしょう。その短い消費期限は、新鮮さを追求する姿勢の表れであり、まさに「出来立ての美味しさを味わってほしい」という、作り手の熱い思いが感じられます。倉敷を訪れた際には、ぜひ一度、この歴史と伝統が息づく珠玉の和菓子を味わってみてください。

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