藤本武

藤本 武

日本の経済学者。1912年2月28日に京都府舞鶴市で生まれ、2002年6月9日に逝去。経済学博士（東京大学）。特に労働経済学、社会政策学の分野で顕著な業績を残した。

東京帝国大学経済学部を1935年に卒業後、全国米穀販売購買組合連合会や日本労働科学研究所などでキャリアを積んだ。その後、日本女子大学文学部教授に就任し、教育・研究活動に従事。労働科学研究所では客員所員も務めた。研究活動においては、1962年に「最低賃金制度の研究」により、東京大学から経済学博士の学位を授与された。このテーマは、彼の研究の中心的な柱の一つとなる。

学術分野への貢献も大きく、1972年には社会政策学会の代表幹事を務めた。これは、彼が同学会において重要な役割を果たし、労働問題や社会政策の研究を牽引する立場にあったことを示している。

藤本武の研究は、最低賃金制度、賃金構造、労働時間、労働災害といった現代の労働問題から、組頭制度、さらには各国の貧困史や労働条件の国際比較にまで及び、その知見は多岐にわたる。特に最低賃金制度に関する研究は体系的であり、その基礎を確立した業績として評価されている。

主要な著作としては、学位論文を基にした『最低賃金制度の研究』（日本評論新社）のほか、岩波新書から刊行された『労働時間』や『最低賃金制』は、多くの読者に労働経済学の基礎を解説する役割を果たした。また、『ストライキ』（新日本新書）や、国内外の労働条件を比較分析した『国際比較日本の労働条件』（新日本出版社）、『世界からみた日本の賃金・労働時間』（新日本新書）なども重要な著作である。

晩年に至るまで旺盛な執筆活動を続け、特に『アメリカ貧困史』や『イギリス貧困史』（いずれも新日本新書）といった貧困の歴史に関する研究にも力を注ぎ、その社会的な側面にも深い洞察を示した。単著のみならず、他の研究者との共編著も多く、その共同研究を通じて後進の指導や共同での知の探求にも貢献した。

藤本武の著作は、学術研究としてだけでなく、労働組合関係者や政策立案者など、幅広い層に影響を与えた。彼の研究は、労働者の権利擁護や労働条件改善のための理論的基盤を提供し、日本の社会政策形成に貢献したと言える。その生涯にわたる研究活動は、日本の労働経済学、社会政策学の発展に不可欠なものであった。

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