藤村義朗 (政治家)

藤村義朗：実業界と政界を駆け抜けた男爵の生涯

藤村義朗（ふじむら よしろう、1871年1月24日 - 1933年11月27日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の実業家であり、政治家でした。男爵の爵位を持ち、三井物産での成功、貴族院議員としての活動、そして逓信大臣への就任など、華々しい経歴を残しています。幼名は狐狸馬（こりゅうま）と称されました。

生い立ちと教育

熊本県を本籍地とする藤村義朗は、貴族院議員で男爵であった藤村紫朗の長男として京都で誕生しました。1885年、山梨県立徽典館中学校を卒業後、細川護成氏と共にイギリスへ留学。ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジを卒業し、高度な教育を受けました。1892年に帰国後は、九州学院（熊本済々黌）の教授を経験しています。

三井物産での活躍

1894年、藤村義朗は三井鉱山会社に入社。庶務課勤務や本店事務員などを経て、1898年には三井物産に移籍しました。同社では、参事、秘書課主任、船舶課主任、口之津支店長、船舶部長と要職を歴任し、ロンドン支店勤務や上海支店長も務めました。1918年には取締役へと昇進し、三井物産の成長に大きく貢献しました。

貴族院議員としての活動

1909年、父の死去に伴い男爵を襲爵。1916年には上海公共租界工部局董事会委員に当選し、国際的な視野も持ち合わせていました。1918年、貴族院男爵議員選挙に当選し、以後、連続して当選を重ねました。公正会に所属し、貴族院議員として活発な活動を展開。特に、貴族院改革に強い関心を示し、1921年には独自の改革案をまとめた書籍を自費出版するなど、積極的な姿勢を見せました。

その改革案では、皇族議員以外の貴族院議員を「華族議員」と「勅任議員」に大別し、数を同数にすることを主張。華族議員の定数削減や勅任議員の定数増加、貴族院議員の歳費全廃といった、当時としては革新的な提案も行いました。さらに、議員選出方法の改革も訴え、華族議員の互選制導入や勅任議員の推薦制導入などを提唱しました。これらの活動から、政府を厳しく追及する姿勢から「カマキリ男爵」と呼ばれたという逸話も残されています。

逓信大臣とその他の活動

1924年、清浦内閣の逓信大臣に就任。大臣として行政に携わった後、1925年、1932年と貴族院男爵議員に再選されました。また、上海紡織有限公司専務取締役、大正日日新聞社長、全国養蚕組合連合会会長、国際観光委員会委員、国立公園委員会委員長なども歴任し、多方面で活躍しました。

死去と爵位の継承

1933年、藤村義朗は逝去しました。しかしながら、後継者がいなかったため、藤村家の男爵位は廃絶しました。

まとめ

藤村義朗は、実業界で成功を収め、政治家としても重要な役割を果たした稀有な人物です。三井物産での功績、貴族院議員としての改革案、そして逓信大臣としての経験は、日本の近代化に貢献したと言えるでしょう。また、国際的な活動や様々な団体での活動を通して、多様な分野で才能を発揮しました。彼の生涯は、近代日本の発展を理解する上で重要な一端を担っていると言えるでしょう。

家族

父：藤村紫朗
妻：増喜（石川県士族・松平康徳養子、中村之栄長女）
弟：片岡和雄（磐城軌道社長、片岡源馬の養嗣子）
妹：安（熊本県士族・沢村雅雄弟晴雄の妻）
妹：美代（山口県士族・木梨辰次郞の妻）

栄典

1915年（大正4年）11月7日：銀杯一組

著作

* 藤村増喜編『東野遺稿』（横井半三郎、1936年）

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