藤枝焼津間軌道会社

藤枝焼津間軌道会社の歴史と詳細

藤枝焼津間軌道会社は、静岡県の藤枝町（現在の藤枝市）と焼津村（現在の焼津市）を結ぶ人車軌道を運営していた企業でした。当初の名称は藤枝焼津間軌道でしたが、後に焼津藤枝間軌道に改称されました。基本的には手動で運転されましたが、急勾配のある瀬戸川の堤防を上る際は馬に牽引されていました。

設立と経営の背景

この会社は1899年（明治32年）に商法が施行される前に設立されたため、法的な区分は存在しませんでした。発起人は片岡総八郎で、個人事業体としてスタートした可能性が高いと考えられています。設立の際の公的な資料は非常に限られており、情報の多くは後世の研究や証言から得られたものです。

1891年5月には内務省に「藤枝町大手から焼津に至る人車木道」の敷設許可が出され、同年の7月21日には工事が完了したと記録されています。このことから、おそらく1891年7月25日に全線が開業したと考えられています。しかし、乗客や貨物の需要が少なかったため、会社は1897年に経営権を川守亀吉に譲渡し、その際に名称も変更されました。その後の会社の運営状況については記録が残っておらず、1900年には廃止されたとされています。

路線と運行情報

藤枝焼津間軌道のルートは、東海道線から離れた藤枝町と官鉄焼津駅を直接結ぶことを目的としていました。この軌道は、かつての砂利採取のために使用されていたトロッコの跡地を流用したもので、全長約4.5kmにわたって敷設されていました。具体的には、藤枝の大手の起点から焼津の西町に至る道を整備していました。

時刻表には、焼津、瀬戸川、藤枝の3つの駅が記載されており、全線の所要時間は片道25分から30分でした。旅客は毎日7往復したほか、臨時便も運行されており、開業時の旅客運賃は区間ごとに2銭で、貨物運賃も同様の料金設定がされていました。この背景には、経営が続かなかった原因として、駅との接続不便さが影響していたとの見方があります。

地元における再評価

1990年代に入ると、当時の時刻表や証言が発見され、再び注目を集めることとなりました。「幻の人車」として過去の文献に散見された存在が、「日本初の人車」へと評価が変わりました。その後、焼津市史にも資料が残され、地域における重要な交通手段としての存在が再確認されました。

その他の注記

藤枝焼津間軌道に関する資料は少なく、その存在は長らく忘れられていましたが、地域住民の有志によって人車のレプリカが作成されています。同軌道で使われた元の人車については記録が不十分であり、詳細な画像や資料は見つかっていません。しかし、後の研究や講演などを通じて、情報が徐々に整理されてきました。

この歴史的な企業や交通手段の存在は、静岡県の交通史において重要な位置を占めており、今後もさらなる研究が待たれます。

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