藤田卓史

藤田 卓史

藤田 卓史（ふじた たかし）は、1982年11月21日に生まれた、社会人野球の元投手です。父は元南海ホークスで投手としてプレーした藤田 学であり、父子二代にわたる野球人として知られています。

父がプロ野球選手として大阪を拠点とするチームに所属していたため、藤田卓史氏も大阪府で生を受けました。しかし、父の所属チームが1989年に福岡県へと本拠地を移転したことに伴い、幼少期からは福岡で育ちました。この環境が、彼のその後の野球人生に大きな影響を与えたと考えられます。

高校は福岡県の沖学園高等学校に進学し、野球部で腕を磨きました。高校卒業後、さらなるレベルアップを目指し、大学野球の強豪として知られる九州共立大学へ進学。大学時代には、全国から強豪校が集まる全日本大学野球選手権大会への出場も果たし、全国の舞台で経験を積みました。

大学卒業後、同期の内野手である加藤佑介氏と共に、社会人野球の名門として名高い東芝に入社しました。しかし、入社から数年間は、期待されながらも怪我の影響やチーム内の層の厚さもあり、なかなか公式戦のマウンドに立つ機会を得られずにいました。特に2009年シーズンが終わるまでは、目立った登板記録はほとんどありませんでした。

2010年、都市対抗野球での輝き

彼の社会人野球キャリアにおいて、まさに転機となったのが2010年です。この年から公式戦での起用が増え始めると、本来持っている実力を遺憾なく発揮します。そして同年夏に開催された第81回都市対抗野球大会では、チームのエース格として大車輪の活躍を見せました。大会期間中、東芝が戦った5試合のうち、藤田投手は3試合に先発投手として登板しました。

中でも特筆すべきは、大会の1回戦、対東海理化戦と、そして全国制覇をかけた決勝戦、対JR九州戦という極めて重要な試合で、いずれも相手打線を完全に抑え込む完封勝利を達成したことです。プレッシャーのかかる大舞台で、相手に一切得点を許さないという圧倒的なピッチングを披露しました。この鮮烈なパフォーマンスが高く評価され、その年の都市対抗野球大会で最も活躍した選手に贈られる、社会人野球界で最も権威ある個人賞の一つである橋戸賞を受賞しました。さらに、同年は年間最優秀防御率のタイトルも獲得するなど、藤田卓史という名前が全国に知れ渡った飛躍の一年となりました。


藤田投手の最大の武器は、右投げのサイドスローという独特なフォームから投げ込まれるピッチングでした。最速145km/hを計測する伸びのあるストレートに加え、打者の手元で鋭く横滑りするスライダーを巧みに使い分け、多くの打者を打ち取りました。

また、社会人野球日本代表としても活躍し、2010年の第16回アジア競技大会、翌2011年の第39回IBAFワールドカップにも選出され、国際舞台でも日本のために腕を振るいました。

プロ野球選手だった父を持ち、自身も社会人野球の名門で輝かしい実績を残した藤田卓史氏は、2014年シーズンをもって現役生活に終止符を打ちました。プロの世界には進みませんでしたが、特に2010年の都市対抗野球での歴史的な活躍は、多くの社会人野球ファンの記憶に深く刻まれています。

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