藤目ゆき

藤目ゆき

藤目ゆき（ふじめ ゆき、1959年 - ）は、日本の歴史学者であり、大阪大学大学院人間科学研究科で教授を務めています。専門は日本近現代史で、特にジェンダー史、女性史の分野で重要な研究を行っています。

経歴

大阪府に生まれ、京都大学文学部史学科を卒業後、1990年に同大学院文学研究科博士後期課程を単位取得退学しました。1995年には、「近現代日本の性と生殖統制と社会運動」に関する研究で京都大学から文学博士号を取得しました。その後、1996年に大阪外国語大学助教授に就任、2007年4月には准教授、同年10月には大阪大学との合併により人間科学研究科准教授、2011年に教授となりました。

研究内容

藤目ゆきの研究は、日本近現代史におけるジェンダーとセクシュアリティの問題に焦点を当てています。特に、公娼制度に関する研究は、彼女の代表的な業績の一つです。

『性の歴史学』

1997年に出版された『性の歴史学 ー 公娼制度・堕胎罪体制から売春防止法・優生保護法体制へ』は、彼女の博士論文を増補したもので、山川菊栄賞を受賞しました。この著書では、公娼制度が日本独特のものであるという従来の考え方を批判し、近代公娼制度を「軍隊慰安と性病管理を機軸とした国家管理売春の体系」と定義しました。さらに、公娼制度はフランスで確立し、その後ヨーロッパやイギリス、日本に導入されたと指摘し、フランスを「公娼制度の祖国」と評しました。この研究は、公娼制度を単なる道徳的な問題としてではなく、国家権力や社会構造と密接に関わる問題として捉え直すことを促し、フェミニズムの売春論議に新たな視点を提供しました。

アジア現代女性史研究

2004年には、南田みどり、今岡良子、大越愛子、ミリアム・シルバーバーグらと共にアジア現代女性史研究会を発足させ、明石書店からアジア現代女性史シリーズを出版しています。2005年以降、『アジア現代女性史』を毎年刊行しており、アジア各国の女性の歴史を研究しています。この研究は、日本国内だけでなく、アジア全体の視点から女性史を捉える重要性を示しています。

主な著作

単書
『性の歴史学 ー 公娼制度・堕胎罪体制から売春防止法・優生保護法体制へ』不二出版, 1997
『女性史からみた岩国米軍基地 広島湾の軍事化と性暴力』ひろしま女性学研究所, 2010
『「慰安婦」問題の本質ー公娼制度と日本人「慰安婦」の不可視化』白澤社, 2015
編集・監修
『国連軍の犯罪 民衆・女性から見た朝鮮戦争』（編集復刻版）不二出版, 2000
『現代の奴隷制 タイの売春宿へ人身売買されるビルマの女性たち』（監修） 明石書店, 2006
『中国における買売春根絶政策 一九五〇年代の福州市の実施過程を中心に』（監修）明石書店, 2007
『女たちのビルマ 軍事政権下を生きる女たちの声』（監修）明石書店, 2007
『フェミニストが語るタイ現代史 一〇・一四事件と私の闘い』（監修） 明石書店 2007
『朝鮮半島の分断と離散家族』（監修）明石書店, 2008
『憤れる白い鳩二〇世紀台湾を生きて 六人の女性のオーラルヒストリー』（監修）明石書店, 2008
『インドネシア九・三〇事件と民衆の記憶』（監修）明石書店, 2009
『ベトナム女性史 フランス植民地時代からベトナム戦争まで』（監修）明石書店, 2010
翻訳
『ある日本軍「慰安婦」の回想 フィリピンの現代史を生きて』岩波書店, 1995

藤目ゆきの研究は、ジェンダー史、女性史、セクシュアリティ研究において重要な貢献をしており、彼女の著作は、学術的な価値だけでなく、社会的な影響力も持っています。

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