藻類学

藻類学（そうるいがく）

藻類学（そうるいがく、英語：phycology）は、広義の植物学に属し、主に水生生物である藻類を対象に科学的な探求を行う学問分野です。

藻類とは

藻類は、地球上の多くの水環境において生態系の基盤となる一次生産者として極めて重要です。特に海中においては、膨大な量の有機物を生産しています。藻類の多くは水中に生育し、光合成によってエネルギーを得る真核生物ですが、根、茎、葉といった高等植物に見られる組織の分化が見られない点で特徴づけられます。形態は非常に多様で、肉眼では捉えられない単細胞の浮遊性微生物である植物プランクトンや微細藻類から、巨大な海中林を形成するコンブの仲間（ケルプ）のような多細胞生物まで、幅広い種類が含まれます。

また、藻類学では伝統的に、光合成を行う真正細菌の一群であるシアノバクテリア（かつてのラン藻）も研究対象として扱います。一部の微細藻類は、菌類と共生して地衣類という独自の生物群を形成することもあります。

藻類学者の役割

藻類学者は、このような多様な藻類の分類、形態、生理、生態、遺伝、進化などを研究する専門家です。しばしば比較される菌学者（真菌を研究する専門家）とは、研究対象が異なります。

藻類学の歴史

人類は古くから、特に食用として海藻を利用しており、古代ギリシャやローマ時代、そして古代中国における栽培の記録も存在します。しかし、藻類が科学的な研究対象となったのは、生物の体系的な分類と命名が始まった近代以降です。

18世紀半ば、近代分類学の父カール・フォン・リンネとその弟子たちによって、菌類などとともに「隠花植物」として位置づけられた藻類の命名が開始されました。リンネの弟子、ペール・オスベックは1757年にコンブの一種を学名で記載しました。19世紀に入ると、イギリスのドーソン・ターナーやスウェーデンのカール・アドルフ・アガードらが精力的に種の記載を行いましたが、藻類の分類体系が本格的に構築され始めたのは19世紀後半になってからです。フランスのジャン＝フィリックス・ラムルーやイギリスのウィリアム・ヘンリー・ハーヴィーが分類学の発展に貢献し、特にハーヴィーは海藻の色に基づいた分類を提案しました。

その後もドイツのフリードリヒ・トラウゴット・キュッツインクらによって多くの藻類が記載されました。日本では、岡村金太郎が日本沿岸の海藻に関する詳細な記載と分布研究で大きな功績を残しています。イギリスでは、ロバート・ケイ・グレヴィルが1830年代に英国の藻類に関する著作を出版しましたが、それに続く包括的なカタログが出版されるまでには長い年月を要しました。

藻類の形態学や生殖に関する研究も進展しました。スイスのジャン＝ピエール・ヴォーシェは1803年に形態や有性生殖について発表しましたが、生殖機構の解明が大きく進んだのは20世紀以降です。イギリスのフェリックス・ユージン・フリッシュは、それまでの研究を総括した著作を発表しました。20世紀のイギリスからは、メアリー・パークやリリー・ニュートンといった著名な藻類学者も輩出されています。

関連情報

日本藻類学会
International Phycological Society (国際藻類学会)

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