蘭陵王 (田中芳樹の小説)

蘭陵王

『蘭陵王』は、作家田中芳樹が執筆した歴史小説です。この作品は、中国の北斉時代に実在した人物、高長恭、通称蘭陵王を中心に描かれています。田中氏は幼少期に三島由紀夫による短編小説に出会い、蘭陵王という名前に興味を持つようになりました。そのきっかけから、歴史的な物語に対する情熱が生まれ、ついには蘭陵王を主題とする小説を書こうと決意したのです。

執筆の経緯

田中は大学時代に『アジア歴史事典』を通じて蘭陵王に関する記述を目にし、その後、北斉書と呼ばれる正史を読み進めました。蘭陵王は度重なる困難に直面しながらも、時代を支えた貴族であり、卓越した戦士としてその名を遺しています。その美貌から仮面をつけて戦ったという伝説もあり、非業の死を遂げた彼の人生は非常に魅力的です。これを題材にした作品は日本には存在せず、田中氏はこの独自の歴史を描くことに挑戦する必要があると感じたのです。

彼の創作活動が進む中、蘭陵王の物語を書く機会はなかなか訪れず、時が経つにつれて忘れられていくのではないかと心配することもありました。しかし、文藝春秋の編集者からの強い後押しを受け、ついにこの作品の執筆が実現しました。その成果として、2009年に本書が刊行され、以降も多くの読者に親しまれています。

物語の背景

物語は六世紀の中国を舞台にしており、南北朝時代という激動の歴史が描かれています。北斉は無能な皇帝の下で混乱が続き、西には北周、南には陳、北には突厥と majorな敵に囲まれています。そんな動乱の中で、蘭陵王はその才能を活かし、不敗の名将として国を護り続けます。彼の智略と勇気は、困難な時代の中でも光り輝くものとして、多くの読者に感動を与えています。

登場人物

• - 高長恭（蘭陵王）: 本作の主人公。北斉の皇族で、智勇を兼ね備えた理想的な武将。彼の美貌ゆえに仮面をつけて戦ったという逸話があります。
• - 徐月琴: 物語の中で重要な役割を果たすキャラクターであり、本作の狂言回し的存在です。実在の人物ではありませんが、『太平広記』に記された女性仙人、徐仙姑の娘を自称しています。彼女は妙な存在感を持ち、物語に独特の色合いを加えています。

書誌情報

『蘭陵王』の版元は文藝春秋で、初版は2009年9月29日に発行されました。その後、2012年には文庫本としても刊行されています。また、2019年からは桐嶋たけるが作画した漫画版がSOZO Comicsから電子書籍としてリリースされています。

この作品は、歴史的な背景とフィクションが巧みに組み合わさっており、読者を魅了する物語になっています。高長恭の生き様、時代の風雲を背景にした彼の戦い、そして彼を取り巻く人々のドラマが織り交ぜられ、深い歴史理解につながる价值がある作品です。

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