太平広記

『太平広記』の概要

『太平広記』は、北宋時代に編纂された類書で、全500巻、目録10巻から成り立っています。この書は、北宋の太宗による命令を受けて、李昉を中心とする12名の編纂チームによって作成されました。一般に『太平御覧』や『文苑英華』、さらには『冊府元亀』と並ぶ四大書の一つとして広く知られています。編纂作業は太平興国2年（977年）から翌年の3年（978年）にわたり行われました。

収録内容と特徴

『太平広記』は、前漢から北宋初期までの「奇談」を7000篇以上集め、これを92の類に分類しています。この分類は神仙、方士、名賢など、多岐にわたります。おそらく、中国に現存する小説類書の中では最古の例にあたると言えるでしょう。

引用書目として『史記』をはじめとする343種を巻頭に列挙していますが、実際に採録されている書は500種近く、その中でも現存するものは235種類に上ります。多くの書名が明記されており、散逸した古典書物を保存する役割も果たしています。そのため、文学を学ぶ上で非常に貴重な資料となっています。

文学への影響

『太平広記』の影響は広範囲にわたります。南宋や元代の話本、雑劇だけでなく、明代や清代の小説や戯曲にも多くの作品が本書を題材にしています。さらに、李氏朝鮮の初期に朝鮮へ伝わり、『太平広記詳節』や『太平広記諺解』としての再編がなされ、李朝漢文小説においても重要な位置を占めました。日本にも伝えられ、翻訳や翻案が行われ、『怪談全書』という形で再発表されています。

題名の付け方

収録されている各条文には、その多くが話の冒頭に登場する人物名に基づいて題名が付けられています。この人物名を題名に用いる原則は、全体の約8割を占め、たとえ元々題名があった作品でも、この原則に従って改題されることが一般的です。たとえば、「枕中記」という話は、『太平広記』では「呂翁」として収録され、他の書では原題のままで紹介されています。

出版の歴史

『太平広記』は、太平興国6年（981年）に最初の版が刻まれましたが、必要性が低いと見なされ、その後の増刷はされずに民間での流通は少なかったと言われています。明の嘉靖45年（1566年）には、談愷によって再出版され、その後改訂版も刊行されました。
また、許自昌による校訂版や清代の黄晟による小型本など、様々な版本が存在し、それぞれに特徴があります。1959年には汪紹楹によって校勘された版が出版され、その後もさまざまな版が出されています。

分類と構成

本書は、大きく92の類に分類され、さらに約1500の小類に細分化されています。大類は神仙、女仙、異人、報応、医など、幅広い分野を網羅しており、各巻にはさまざまな物語が盛り込まれています。この豊かな内容は、古典文学研究や中国文化の理解を深める上で欠かせない資料とされています。

結論

『太平広記』は、その編纂方法、小説の多様性、広範な影響力から見ると、中国文学史の中で非常に重要な位置づけを持つ作品です。今日でも、その価値は高く評価され、様々な形での研究や翻訳が続けられています。

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