虚偽告訴等罪

虚偽告訴等罪について

虚偽告訴等罪は、刑法が定める犯罪類型の一つであり、他人に刑事または懲戒処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発、その他の申告を行う行為を指します。この罪は、単に嘘の被害を訴えるだけでなく、虚偽の告発や、処罰を求める申告も含まれます。かつては、虚偽の申告で人を貶める行為は、讒訴（ざんそ）や誣告（ぶこく）と呼ばれていました。旧刑法下でも、同様の行為は誣告罪として処罰されていました。

保護法益

虚偽告訴等罪が保護する法益は、まず国家の適正な刑事司法作用という国家的利益であり、次に個人の私生活の平穏という個人的利益です。この罪が成立するためには、これら両方の利益が侵害される危険性が必要です。

虚偽告訴等罪によって有罪判決を受けた者が、その虚偽告訴が原因で有罪となった場合、その判決は再審請求の理由となります。

客観的要件

虚偽告訴等罪の行為は、「虚偽の告訴、告発その他の申告」です。これは、警察などの行政機関への申告だけでなく、弁護士会に対する弁護士の懲戒請求も含まれる可能性があります。虚偽の申告とは、客観的事実に反する申告を指します。申告された事実は、刑事処分または懲戒処分の成否に影響を及ぼすものであり、捜査機関や懲戒機関の職権発動を促すのに十分な具体性が必要です。虚偽の申告が担当官署に到達した時点で、既遂となります。

主観的構成要件

虚偽告訴等罪は目的犯であり、「人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的」が必要です。この目的は、確定的な刑事処分や懲戒処分を意図する必要はなく、刑事捜査や懲戒調査の対象とすることでも十分です。つまり、虚偽の申告によって刑事処分や懲戒処分がなされるかどうかについては、未必的な認識で足りると解釈されます。

自白による刑の減免

虚偽告訴等罪は、犯人が自白した場合、刑が減軽または免除されることがあります。これは、虚偽の申告によって冤罪が生じる危険性を考慮し、真実の解明を促進するための措置です。

統計

警察庁の犯罪統計によると、虚偽告訴等罪の発生件数は年間30件から40件程度で推移しています。検挙人員の男女差は小さいものの、やや男性の方が多い傾向にあります。この統計は、虚偽告訴等罪が社会的に稀な犯罪ではあるものの、決して軽視できない犯罪であることを示しています。

関連項目

• - 虚偽告訴
• - 虚偽申告（軽犯罪法第1条第16号）

参考資料

• - 山口厚『刑法各論　第2版』有斐閣、2010年。ISBN 978-4-641-04276-6。

虚偽告訴等罪は、個人の名誉やプライバシーを侵害するだけでなく、国家の司法制度の信頼性を損なう行為です。このような行為は厳しく罰せられるべきであり、社会全体で撲滅していく必要があります。

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