虜-TORIKO-

甲斐バンド『虜-TORIKO-』：サウンドへの飽くなき探求が結実したNY3部作の幕開け

1982年にリリースされた甲斐バンドの9枚目のオリジナルアルバム『虜-TORIKO-』は、バンドサウンドの新たな地平を切り開いた"NY3部作"の第一弾として位置づけられています。前作『破れたハートを売り物に』でのサウンドに満足できなかった甲斐よしひろは、理想のエコー感を求めて海外の楽曲を徹底的にリサーチ。その結果、最も優れたサウンドを手掛けていたのがボブ・クリアマウンテンだったのです。

ボブ・クリアマウンテンとの出会いとサウンドへのこだわり

NY3部作のきっかけとなったのは、前作のタイトル曲「破れたハートを売り物に」のリミックスでした。ボブ・クリアマウンテンがこの曲を「面白い」と感じたことからリミックスが実現し、その仕上がりに甲斐は感涙したと言われています。彼のミックスは、甲斐バンドのサウンドに新たな息吹を吹き込み、その後の音楽制作に大きな影響を与えました。

しかし、ニューヨークでのミックスには莫大な費用がかかりました。制作費は約3500万円にものぼり、アルバムが30万枚売れなければ赤字という状況だったそうです。それでも甲斐は、「やる価値があった」と語り、サウンドへの強いこだわりを示しています。

視覚的な仕掛けも凝らされた初回限定盤

初回限定盤には、透明なフィルム3枚が付録として付属していました。これらのフィルムをジャケットに重ね合わせると、手を縛られた女性（モデルはオンシアター自由劇場時代の余貴美子）の写真が現れるという、視覚的な仕掛けが施されていました。音楽だけでなく、アートワークにもこだわり抜いた作品であることが伺えます。

デジタルリマスター盤とボーナストラック

2007年には、紙ジャケット仕様のデジタルリマスター盤がリリースされました。このリマスター盤には、「ナイト・ウェイブ （プライベートルーム・ヴァージョン）」と「哀しみのイレーヌ （インストゥルメンタル）」の2曲がボーナストラックとして追加収録されています。

収録曲

全作詞・作曲:甲斐よしひろ

1. BLUE LETTER
2. ナイト・ウェイブ
3. 観覧車'82 (『破れたハートを売り物に』収録曲のリメイク)
4. ブライトン・ロック
5. 無法者の愛
6. 虜
7. 呪縛（のろい）の夜
8. フィンガー
9. 荒野をくだって

2007年リマスター紙ジャケ盤 Bonus Track

10. ナイト・ウェイブ （プライベートルーム・ヴァージョン）
11. 哀しみのイレーヌ （インストゥルメンタル）

参加ミュージシャン

詳細な参加ミュージシャンの情報は、現時点では確認できませんでした。

『ポイズン80's』で明らかになった未発表テイク

編集盤『ポイズン80's』では、N.Y3部作の各楽曲のアルバム未収録テイクや未発表テイクが公開されています。これにより、甲斐バンドの楽曲制作の過程を垣間見ることができます。

『虜-TORIKO-』は、甲斐バンドのサウンドに対する飽くなき探求心と、新たな音楽への挑戦が結実した作品です。ボブ・クリアマウンテンとの出会いによって生まれた洗練されたサウンド、初回限定盤の視覚的な仕掛け、そしてデジタルリマスター盤でのボーナストラックの追加など、様々な要素がこのアルバムの魅力を高めています。

もう一度検索