虫垂切除術

虫垂切除術：歴史、種類、手術方法

虫垂切除術は、腹部右下方に位置する虫垂に炎症が起こる急性虫垂炎などの治療に用いられる外科手術です。歴史は古く、外科学において最も初期から行われてきた手術の一つに数えられます。

歴史

虫垂切除術の最初の症例報告は、1735年にさかのぼります。フランス人の外科医クラウディウス・アミアンドが、ロンドンのセントジョージ病院で10代の少年の鼠径ヘルニア手術を行った際、ヘルニアの内容物の中に化膿した虫垂を発見し、切除しました。この症例は「Amyand's hernia（アミアンドヘルニア）」として知られています。この偶然の発見から、虫垂炎に対する手術治療の概念が確立し始めました。その後、外科技術の進歩とともに、虫垂切除術は洗練され、現代医学においても重要な手術として位置づけられています。

種類

虫垂切除術には、大きく分けて以下の2種類の手術方法があります。

1. 開腹虫垂切除術

開腹虫垂切除術は、腹部を切開して直接虫垂にアクセスする手術方法です。一般的には局所麻酔、または脊椎麻酔を用いて行われます。患者の状態や医師の判断によって麻酔方法は選択されます。

2. 腹腔鏡下虫垂切除術

腹腔鏡下虫垂切除術は、小さな穴を数カ所開けて腹腔鏡と呼ばれる内視鏡を挿入し、モニターを見ながら手術を行う低侵襲手術です。通常は全身麻酔下で行われます。開腹手術に比べて傷が小さく、回復が早いというメリットがあります。しかし、すべての症例に適用できるわけではなく、患者の状態や虫垂炎の重症度などを考慮して手術方法が選択されます。

手術方法：開腹虫垂切除術

ここでは、一般的な開腹虫垂切除術の手順を説明します。

1. 皮膚切開

まず、右下腹部に数センチメートルの切開を行います。切開方法には、正中切開、交差切開（McBurney法）、傍腹直筋切開（Lennander法）などがあります。医師は、患者の状態や虫垂の位置などを考慮して最適な切開方法を選択します。

2. 虫垂の剥離

切開後、腹腔内に進入し、虫垂を周囲組織から慎重に剥離していきます。虫垂は盲腸から伸びているため、盲腸との癒着に注意しながら剥離を進めます。

3. 虫垂間膜の結紮・切離

虫垂を支えている虫垂間膜を、結紮器を用いて結紮し、切離します。出血を防ぐために、正確な操作が求められます。

4. 虫垂根部の結紮・切断

最後に、虫垂の根元を結紮し、切断します。切断後、出血がないことを確認し、腹腔内を洗浄します。その後、切開部を縫合し、手術は終了します。

関連

虫垂切除術は、急性虫垂炎の治療に最も一般的な手術ですが、その他の腹部疾患の治療においても、併発症として行われる場合があります。

まとめ

虫垂切除術は、古くから行われている安全で有効な手術ですが、手術方法や麻酔方法、術後の管理などは、患者の状態や医師の経験、医療機関の設備によって異なります。手術を受ける際には、医師と十分に相談し、納得した上で手術を受けることが重要です。

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