虹のある風景 (エルミタージュ美術館)

ピーテル・パウル・ルーベンス『虹のある風景』

『虹のある風景』（露: Пейзаж с радугой、英: The Rainbow Landscape）は、フランドルの巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスが1632年から1635年にかけて制作した油彩画です。この作品は、ルーベンスが手がけた数少ない風景画の一つであり、彼自身のために描かれたと考えられています。元々は板に描かれていましたが、後にキャンバスに移されました。現在はサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されています。

作品の特徴

ルーベンスの風景画は、その作品全体から見ると決して多くはありません。しかし、風景画は彼が愛したジャンルの一つであり、注文制作ではなく、自己表現の手段として描かれていました。

本作は、現実の風景をそのまま写し取ったものではなく、画家の想像力によって生み出された、理想化された風景です。ルーベンスは、古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』に登場する「黄金時代」をイメージし、平和で穏やかな世界を描いています。人々は争いもなく、自然と調和して生活を送っています。

この絵画には、人間と自然が穏やかに調和している様子が描かれています。一日の仕事を終えた人々が休息する牧歌的な雰囲気は、周囲の自然の静けさと共鳴しています。しかし、この風景は現実には存在しない、夢のような世界であることが示唆されています。虹のように儚く消えゆく幻であると同時に、人生への賛歌、自然の生命と鼓動をダイナミックに表現した、宇宙的なヴィジョンに満ちた作品と言えるでしょう。

また、この作品には、ヴェネツィア派の画家たちをはじめとするイタリアの巨匠たちの影響が見られます。これらの要素は、1630年代後半のルーベンスのフランドル風景画とは異なる、独自の作風を形作っています。

ルーベンス工房の複製

かつてルイ18世のコレクションにあった本作の複製が、ルーベンス工房によって制作されました。この複製は、1945年まで真作とされていましたが、現在ではパリのルーヴル美術館に所蔵されています。

作品詳細

作者: ピーテル・パウル・ルーベンス
制作年: 1632-1635年
技法: 油彩、板（後にキャンバスに移転）
所蔵: エルミタージュ美術館

参考資料

『大エルミタージュ美術館展　世紀の顔・西欧絵画の400年』、国立新美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、エルミタージュ美術館、2012年刊行
五木寛之編著『NHK エルミタージュ美術館 3 近代絵画の世界』、日本放送出版協会、1989年刊行 ISBN 4-14-008625-4

外部リンク

* エルミタージュ美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『虹のある風景』 (英語)

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