蜂須賀喜憲

蜂須賀喜憲（はちすか よしのり）は、宝暦10年（1760年）に徳島藩主一門である蜂須賀重隆の嫡男として生まれました。母は早川儀左衛門包由の娘であり、姉には花山院愛徳室の八重、弟には蜂須賀隆穀がいます。幼名は賢蔵と名付けられ、後に藩主である蜂須賀重喜から偏諱を受け、喜憲と名乗るようになりました。通称は伊豆と称しました。

明和3年（1766年）、喜憲が6歳の時、藩主・重喜の命により臣籍に下り、中老として1500石を与えられることとなります。しかし、これは表向きの理由であり、実際には藩祖である蜂須賀正勝の男系子孫である喜憲から藩主相続権を奪うことが目的でした。彼の父である重隆も、かつて8代藩主宗鎮の養嗣子となった後に廃嫡された経緯があり、喜憲もまた同様の運命をたどることになったのです。

この措置は、蜂須賀家の血統に無縁である養子藩主の重喜による家督の横領とみなされ、家中に大きな反発を招きました。この反発は、後の重喜が隠居処分を受ける一因となったとされています。つまり、喜憲の藩主相続権剥奪は、徳島藩の政治的な混乱を招く要因の一つとなったのです。

明和6年（1769年）、幕府の命令により、重喜は隠居謹慎処分を受けることになります。この際、重喜は自分の実子であり、嫡男としていた千松丸（後の治昭）が藩主を相続することを希望し、幕府もこれを認めました。その結果、喜憲が藩主家を相続するという望みは叶いませんでした。喜憲は、藩主になることなく、不遇な少年時代を送ることになったのです。

安永3年8月4日（1774年9月9日）、喜憲はわずか15歳という若さでこの世を去りました。父である重隆に先立って亡くなったため、家督は弟の隆穀が継ぐこととなりました。喜憲は若くして亡くなりましたが、彼の存在は徳島藩の歴史において、藩主家の血統と権力争いを象徴する出来事として記憶されています。もし彼が藩主となっていたら、徳島藩の歴史は大きく変わっていたかもしれません。彼の短い生涯は、藩主家の血統という運命に翻弄された悲劇として語り継がれています。

喜憲の死後、弟の隆穀が家督を継ぎましたが、隆穀もまた兄と同様に、藩主となることはありませんでした。蜂須賀家の家督争いは、その後も続くこととなり、徳島藩の政治に大きな影響を与え続けました。喜憲の生涯は、徳島藩の歴史における影の部分を浮き彫りにする出来事として、後世に伝えられています。

喜憲の墓は、徳島県内に現存しており、今もなお、多くの人々が彼の短い生涯を偲んでいます。

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