蜂須賀筆子

蜂須賀筆子：徳川慶喜の娘として生きた短い生涯

蜂須賀筆子（はちすか ふでこ）は、明治9年（1876年）7月17日に生まれ、明治40年（1907年）11月30日に31歳という若さで亡くなった女性です。彼女は、江戸幕府最後の将軍である徳川慶喜の四女として、側室の中根幸との間に生まれました。蜂須賀家第17代当主である蜂須賀正韶と結婚し、華族社会で生きました。彼女の生涯は短いものでしたが、その足跡は後世にも影響を与えています。

生い立ち

筆子は、生まれた後すぐに伊勢屋元次郎のもとに預けられました。明治12年（1879年）10月、徳川邸に戻り、その後、明治22年（1889年）7月には、姉の鉄子、妹の経子ら姉妹6人で静岡から東京へ移りました。この頃の彼女は、激動の時代の中で、徳川家の娘としてどのような教育を受け、どのように成長していったのでしょうか。

結婚と家族

明治28年（1895年）12月26日、筆子は蜂須賀正韶と結婚しました。正韶は、徳島藩主蜂須賀家の当主であり、筆子は華族の世界へと足を踏み入れたのです。結婚後、筆子は3人の娘と1人の息子をもうけました。明治29年（1896年）に長女・年子、明治31年（1898年）に二女・笛子、そして明治34年（1901年）には三女・小夜子、明治36年（1903年）には長男・正氏を出産しています。しかし、長男である正氏の出産後、体調を崩し、夫の家督相続を見ることなく、若くしてこの世を去りました。

人物と信仰

筆子は、慶喜から嫁入りの際に贈られた黄金の小さな観音像を大切にし、観音信仰を持っていました。この観音像は、慶喜が幕末に輪王寺宮から贈られたものとされています。彼女が死の床についたとき、この観音像は長女の年子に託されました。このエピソードから、彼女の信仰心の深さや、家族への愛情が伝わってきます。

歌集『はちすのかをり』

筆子は歌集『はちすのかをり』を残しています。この歌集には、彼女の心情や生活が垣間見える歌が収められていることでしょう。歌人としての才能も持ち合わせていたことが伺えます。

子孫

筆子の三女である小夜子は、子爵佐竹義理の嗣子・義種に嫁ぎましたが、21歳で亡くなりました。また、孫（正氏の娘）には蜂須賀正子がいます。彼女の血筋は、現代にも繋がっています。

蜂須賀筆子の生涯は、徳川家の娘として、そして華族の妻として、短いながらも波瀾万丈なものでした。彼女の残した足跡は、今もなお、私たちに様々なことを語りかけているようです。

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