蝶々さん (小説)

『蝶々さん』

『蝶々さん』は、著者・市川森一による日本の長編時代小説であり、2006年から2008年まで長崎新聞に連載され、2008年に講談社から出版されました。この小説は、プッチーニのオペラ『蝶々夫人』を原作とした物語が展開され、明治初期の長崎を背景に、武士の娘として生まれた少女の人生と、アメリカ軍艦の士官との切ない恋模様を描いています。

あらすじ

上巻

物語は明治初頭、長崎から始まります。主人公・お蝶は、佐賀の乱で亡くなった父の遺志を受け継ぎながら、祖母のみわと母のやえの手で新しい学問を学びつつ、武士の娘としての心を育む日々を送ります。しかし、悲劇が訪れる。祖母と母がコレラで急死し、その喪失に苦しむお蝶は、長崎丸山にある老舗待合所「水月楼」の養子となります。成人についての学びも期待していましたが、養母・マツも急死し、ついにお蝶は舞妓としての道を選ばざるを得なくなります。

下巻

舞妓として生計を立てる中で、お蝶はアメリカ海軍士官のフランクリンと運命的に出会います。彼の中には日本の武士に通じる高貴な精神を感じ、お蝶は彼に惹かれていきます。そして、彼らは恋に落ち、結婚を決意します。しかし、周囲の予想通り、フランクリンの結婚は滞在中だけの「長崎式結婚」に過ぎないものでした。新たな生活の中でフランクリンはお蝶に真の愛を見出し、彼らの間には子どもも授かりますが、物語は予期せぬ方向へ進展していきます。

登場人物

• - 伊東蝶（蝶々さん）: 主人公で、舞妓として生計を立てる武士の娘。
• - 谷川伊作: 蝶々の幼なじみの兄。
• - ウィリアム・フランクリン: アメリカ海軍の士官で、お蝶の恋人。
• - 太田マツ: 蝶々の養母で、「水月楼」の女将。

書誌情報

この作品は上巻・下巻の二巻からなり、2008年に出版され、後に2011年にはNHKが製作したテレビドラマ『蝶々さん〜最後の武士の娘〜』として放送されました。このドラマでは、宮崎あおいが主役を務め、多くの視聴者の心をつかみました。

テレビドラマ

NHKの土曜ドラマスペシャルとして2011年11月に放送され、宮崎あおいの演技は高い評価を受けました。市川森一の独特な脚本は、多くの視聴者に感動を与えましたが、残念ながら放送から間もなくして彼は他界しました。

この作品『蝶々さん』は、時代を超えて愛される物語であり、背景に広がる日本の美しい風景と、深い人間ドラマが観る者の心に響く作品となっています。

もう一度検索