融即律

融即律（ゆうそくりつ）とは

融即律、または「神秘的融即」とも呼ばれるこの概念は、物事や現象を独立した存在としてではなく、密接に結びついているものとして捉える心の働きを示します。フランスの哲学者、レヴィ＝ブリュルが著書『未開社会の思惟』の中で提唱したものであり、主に未開民族と文明人の思考の違いを探るための枠組みとして用いられました。この概念は、特に未開社会における独特の思考方式を説明するために導入されました。

融即律の核心

融即律は、別々の存在や現象が同一のカテゴリーに無批判に結びつき、あたかも一つであるかのように感じられる心性の原理です。直接的な推論なしに、物事が結びついていると捉えられるため、理解するのが難しい側面もあります。レヴィ＝ブリュルはいくつかの事例を挙げ、未開民族が器物や生物、または自然現象に対して持つ特異な見方を示しました。

例えば、北部ブラジルのボロロの人々は、自らを金剛インコと同一視する存在として考えます。ここでは、金剛インコが単なる名前や類縁を表すのではなく、彼らが本質的にその鳥と同じであると認識しているのです。この例を通じて、レヴィ＝ブリュルは未開民族の思考が近代人の論理とは根本的に異なることを論じ、融即律がこの異なった思考スタイルの一助であるとしたのです。

理論の発展と批判

しかし、後の文化人類学的研究によって、この融即律の考え方には批判が寄せられました。レヴィ＝ブリュル自身も晩年にはこの二分法を緩和し、未開社会と文明社会の間に思考様式の併存が普遍的であることを認めるに至りました。また、クロード・レヴィ＝ストロースは、未開人と文明人の思考が本質的に異なるものではないことを指摘し、感情を伴った論理的思考が人類全体に共通していることを強調しました。これにより、融即律は未開人特有の心性とは言えなくなり、その概念が再検討されることになります。

ユングの視点

心理学者カール・グスタフ・ユングは、融即律の概念を一貫して考え続けました。彼は、現代人の心の中にも融即律に見られる主体と客体が無意識のうちに同一視される現象が存在することを指摘しました。ユングは、この機能が原始的な無意識状態の名残であるとし、未開社会の神秘的融即が現代人にも影響を及ぼしていると述べました。レヴィ＝ブリュルがこの概念を撤回したことを残念に思ったユングは、この思考スタイルはあらゆる人類に共通するものであると主張しました。

現代の視点

最近では、文化人類学の分野でも融即律が再評価されています。タンバイアのような研究者は、融即律を因果律と対になる概念として捉え、さらなる理解の手がかりとして捉えています。また、認知心理学の領域でもこの議論は影響を与え、融即律に関する研究が人間の認知や思考様式を理解するための重要な視点の一つとされています。

融即律は単なる思考のスタイルを示すだけでなく、文化や心理の相互作用を考える上でも重要なテーマであり、未開社会における人間の思考が持つ独特の魅力を理解するための鍵とも言えるでしょう。

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