蟻二郎

蟻二郎：アメリカ文学者、批評家、そして太陽社社長

蟻二郎（あり じろう、1929年10月27日 - 1996年1月1日）は、アメリカ文学の研究者、文芸批評家、そして出版社・太陽社の社長として多彩な足跡を残しました。本名は三宅二郎。兵庫県姫路市に生まれ、東京外国語大学英米科を卒業後、東京大学英文科大学院を修了。その後、群馬大学に勤務しました。

新思潮の創刊と文壇活動

1961年、蟻二郎は磯田光一、小野二郎、近藤耕人、柘植光彦、中井多津夫らと共に、第16次『新思潮』（晶文社）を創刊し、1964年までその活動を続けました。この雑誌は、当時の文壇に新たな潮流を生み出す原動力となりました。1971年には、明治大学専任講師を辞任しています。

太陽社の設立と出版活動

1967年、蟻二郎は出版社・太陽社を設立。大学の語学テキストの出版を手がける傍ら、アメリカ文学、ヒッピー文化に関する翻訳、そして自身の著作を刊行しました。太陽社は、独自の視点を持つ出版物を提供し、文学界に貢献しました。

古書店「ワンダーランド」の経営

1979年には、神保町に古書店「ワンダーランド」を開店。多くの古書愛好家が集まる場所となりました。

交流と評価

雑誌『新批評』において、英文科教授からの不当な扱いを告発する文章を発表。また、柄谷行人と親交があり、中上健次とも面識がありました。中上健次は蟻二郎について「あいつ、不良だよ」と評したと伝えられています。

太陽社の現在と古書店「ワンダーランド」のその後

太陽社は、1990年代に刊行を再開し、現在も出版活動を続けています。古書店「ワンダーランド」は、蟻二郎の死去後、未亡人が営業を継続しましたが、1999年ごろに閉店しました。高円寺で古本酒場「コクテイル」を経営する狩野俊は、「ワンダーランド」の店員を務めていました。

著書一覧

『W・フォークナーの小説群 その<全体化>理論の展望』南雲堂, 1966年
『アメリカのニグロ作家たち』太陽社, 1968年
『幻覚芸術 LSD、サイケデリック、ラブ・イン』晶文社, 1970年
『変身 神話・民話・SF』晶文社, 1973年
『肥満児』 太陽社, 1974
『帰らざるウエスターン』晶文社, 1977年
『ニューヨークの魅力 さまざまなメルティング・ポットが織りなすビッグ・アップル』 太陽社, 1991

共編著

柄谷行人,森常治と共編『現代批評の構造 通時批評から共時批評へ』思潮社, 1971年

翻訳

ローレンス・S・ホール「岩棚」, 『O.ヘンリー賞作品集』太陽社, 1972年
エリザベス・C・キャンドラー, ラルフ・ロバーツ『血族たち コカ・コーラ 初代のファミリィから四世代まで』西村摩耶（摩野）と共訳, 太陽社, 1993

蟻二郎は、アメリカ文学研究、文芸批評、出版、古書店経営を通じて、日本の文学・文化シーンに独自の足跡を残した人物です。彼の業績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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