血煙高田の馬場

映画『血煙高田の馬場』の概要

『血煙高田の馬場』は、1937年に公開された日本の中篇劇映画で、マキノ正博が監督を務めています。物語は元禄7年に設定され、武士・中山安兵衛と叔父の菅野六郎左衛門の関係が中心です。この映画は、後に再編集された短縮版『決闘高田の馬場』として、1952年に再公開されました。

ストーリーの紹介

物語は、江戸・八丁堀の長屋で酒と喧嘩を好む武士、中山安兵衛（阪東妻三郎）が主人公です。彼は周囲から「先生」と慕われる一方、牛込に住む叔父・菅野六郎左衛門（香川良介）との関係は複雑です。安兵衛は喧嘩に明け暮れる生活を送り、叔父の心配を無視して日々を過ごしています。

ある日、安兵衛が喧嘩をしている現場を叔父に見つかり、長屋で叱責を受けることになります。菅野は安兵衛のことを心配しつつ、剣術の試合で村上庄左衛門に勝ったことが原因で恨まれ、江戸郊外の高田馬場で果たし合いの約束をすることになります。

果たし合いの日、菅野は安兵衛に連絡を試みますが、安兵衛は酒と喧嘩で気を逸らし、時間に遅れそうです。叔父は書き置きを残し、長屋の住人たちに挨拶をして出発します。後に戻った安兵衛は、長屋の仲間に急かされ、叔父の危機を知って高田馬場へ向けて全速力で駆け出します。

安兵衛が到着すると、すでに叔父は村上兄弟らによって瀕死の状態に陥っています。安兵衛はその卑怯な行いに怒りを覚え、周囲の大声援を受けながら壮絶な戦闘を繰り広げていきます。18人を斬り倒した後、ようやく叔父の元へ駆け寄りますが、すでに彼の最後の息は途絶えています。この勝利にもかかわらず安兵衛の心には悔恨と虚しさが残ります。

映画の背景と制作

本作は、マキノと阪東妻三郎にとって、多くの重要な要素を持つ映画でした。両者はこの映画を契機にさらなる名作を生み出していきます。マキノは独自のモンタージュ技法を駆使し、安兵衛の「韋駄天走り」を表現しました。撮影は短期間で行われ、安兵衛と菅野の年齢差を考慮するとキャスティングには工夫が見られます。

また、当時の日本映画界における剣戟映画のスタイルが反映された作品であり、特にカメラワークと演技が特徴的です。マキノは撮影前日、主演の阪東と共にダンスを踊り、そのリズムとノリを取り入れたことで、迫力ある戦闘シーンが生まれました。

映画は初回1947年12月31日に公開され、正月興行として好評を博しました。その後も1970年代にかけて多くの映画祭で上映され、特にイタリア・ヴェネツィア国際映画祭やフランスのナント三大陸映画祭での上映は記憶に残ります。

結論

『血煙高田の馬場』は、時代を超えて愛される作品であり、日本の映画史における重要な位置を占めています。武士の名誉と葛藤、家族の絆をテーマにした物語は、観る者に深い印象を残すことでしょう。

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