行人 (仏教)

行人：寺院を支えた人々

古代および中世日本の寺院において、「行人」は僧侶の身分の一つとして重要な役割を担っていました。現代的なイメージとは異なり、必ずしも修行に専念する者ばかりではありませんでした。

行人の役割：多様な業務と階層

「行人」の語源は修行者であり、山伏などの修験者も含まれていましたが、寺院内では主に世俗的な業務に従事していました。具体的には、寺院施設の維持管理、祭事における花や灯りの準備、炊事、食事の給仕など、寺院運営を円滑に進めるための多様な業務を担っていました。

中には、寺領からの年貢徴収や寺院の警備といった、より実務的な役割を担う者も存在し、その中には武装して僧兵となる者も現れました。これらの業務は、寺院の経済的基盤を維持し、安全を確保する上で不可欠でした。

行人と学侶：対立と共存

行人は、学侶（学問に励む僧侶）や堂衆（寺院の運営に携わる僧侶）とともに寺院の大衆を構成していましたが、学侶よりも身分が低いとみなされることが多く、両者の間ではしばしば対立が生じました。

特に高野山金剛峯寺では、宝徳2年（1450年）に学侶と行人の間で、1000人もの死傷者を出した大規模な衝突が発生しました。木食応其や徳川家康などの介入による和議も試みられましたが、長続きせず、250年以上にわたって両者の対立が続きました。江戸幕府も元禄2年（1689年）と享保元年（1716年）に、行人に対する弾圧を行いました。

明治維新と行人の終焉

明治維新後、日本の寺院制度は大きく変革し、従来の身分制度は解体されました。「行人」という身分も例外ではなく、歴史の舞台から姿を消しました。

まとめ：多様な役割と歴史的意義

行人は、修行者としての側面を持つ一方で、寺院運営に不可欠な実務を担っていました。その多様な役割は、寺院の維持と発展に大きく貢献したと言えるでしょう。しかし、学侶との身分差や対立といった問題も抱え、明治維新によって歴史の幕を閉じました。彼らの存在は、中世日本の寺院社会を理解する上で重要な要素となっています。1000文字以上。1400文字程度。

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