行徳可動堰

行徳可動堰について

行徳可動堰（ぎょうとくかどうぜき）は、千葉県市川市に位置し、江戸川（江戸川放水路）を制御する重要な施設です。江戸川の河口近くに建設されたことから、江戸川河口堰とも呼ばれるこの堰は、1950年に工事が始まり、1957年3月に完成しました。元々は行徳橋と一体の構造だったのですが、地盤沈下などの影響を受け、1975年から1977年にかけてゲートのかさ上げ工事が行われました。

また、完成から50年以上が経過したことから、老朽化が進行しており、2010年度から5年間かけてゲート設備の更新や堰柱の耐震補強を実施しました。

歴史的背景

行徳可動堰の歴史は1911年に遡ります。この年に利根川改修計画が改訂され、江戸川の流量を増やすために川幅を拡幅する工事が始まりました。しかし、行徳周辺は都市化が進んでいたため、川幅の拡幅が困難であり、新たな放水路の掘削が決まりました。1916年に工事が始まり、1919年に江戸川放水路が完成しました。この放水路の入り口には、行徳堰と呼ばれる固定式の堰が設けられましたが、洪水時の流量増加に対応することができなかったため、1950年に可動式の堰が必要とされ、行徳可動堰の建設が進められました。

目的と機能

行徳可動堰には、主に利水と治水の二つの目的があります。

1. 利水: 可動堰は海水の逆流を防ぎ、上流での塩害を回避します。また、江戸川水閘門と連携することで渇水時でも安定した水位を保ち、東京都と千葉県の農業・工業用水、さらに約760万人分の上水道水源を確保する役割を持っています。

2. 治水: 洪水の際にはゲートを開放し、江戸川放水路に大量の水を流すことで、周辺地域での河川氾濫を防ぐ重要な機能を果たしています。

改修と今後の計画

長期間にわたる運用を経て、行徳可動堰は老朽化が進んでおり、特に海水によるゲートの腐食が問題視されています。また、川幅を狭める構造上のデメリットがあり、上流地域での水位上昇のリスクも指摘されています。このため、改修計画が進行中で、この堰の上流170m付近に新たな可動堰を設置することが検討されています。

ただし、人工物であるにもかかわらず、設置から50年以上が経っているため、周囲に形成された環境の変化が懸念されています。特に、絶滅危惧種であるヒヌマイトトンボの生息地や干潟の保全が重要な検討課題となっており、改修工事においてどのように環境を守っていくかが大きな論点とされています。

関連項目

• - 利根川東遷事業
• - 河口堰

外部リンク

• - 国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所

行徳可動堰はその機能なだけでなく、周囲の生態系も含めて考慮しながら今後も重要な役割を果たすことが期待されています。

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