行澤久隆

プロフィールと経歴

元プロ野球選手の行澤久隆氏（ゆきざわ ひさたか）は、1953年7月11日に大阪府大阪市此花区で生まれた。現役時代の登録名は「行沢 久隆」だったが、現在は「行澤 久隆」と表記される。

輝かしいアマチュア時代

PL学園高校では遊撃手として活躍し、2年生だった1970年夏には甲子園準優勝、同年の岩手国体で優勝を経験。翌1971年も夏の甲子園に連続出場するなど、高校球界で名を馳せた。

中央大学へ進学後も遊撃手として東都大学野球リーグで3度の優勝に貢献。特に1973年の全日本大学野球選手権、1974年の明治神宮野球大会では全国制覇を達成した。1975年にはアジア野球選手権日本代表にも選出され、大学通算成績は75試合出場、打率.247、5本塁打、25打点、ベストナイン2回という輝かしい実績を残した。

プロ野球選手としての日々

大学での実績が評価され、1975年のドラフト2位で日本ハムファイターズに入団。ルーキーイヤーから一軍に定着し、遊撃手として出場機会を増やした。1979年シーズン途中、吉岡悟選手とのトレードで西武ライオンズへ移籍。

当時の西武の内野陣において、遊撃、三塁、二塁と複数のポジションを守れるユーティリティプレイヤーとして重宝された。特に1984年には二塁手として自己最高の105試合に出場、打率.270を記録するなど打撃面でも貢献した。西武が黄金時代を築き上げていく過程で、内野の要として堅実な守備と安定したプレーでチームを支え、1988年に現役を引退するまで西武一筋でプレーした。プロ通算では1000試合出場も達成している。

印象的なエピソード

プロ生活で語り草となっているのが、日本ハム時代の1976年に放った「幻の満塁ホームラン」だ。プロ入りわずか3打席目で飛び出した、あわや初本塁打となる一打だったが、興奮のあまり一塁走者を追い越してしまいアウト。記録は3打点付きの単打となり、正式なプロ初本塁打は翌年、満塁本塁打は西武移籍後の1981年に記録することになった。

引退後の歩み

現役引退後も野球に携わり続け、長年西武ライオンズで後進の育成に尽力した。スカウトを経て、1992年から2006年までの15年間、コーチを務め、一軍打撃、二軍打撃、二軍守備走塁などを担当。後にメジャーリーグでも活躍した松井稼頭央氏や中島裕之氏といったトッププレイヤーを育て上げた手腕は高く評価されている。指導においては、西武監督時代の根本陸夫氏から受けた「選手を信頼し、多くを語らず見守る」というスタイルを自身の規範としている。

西武の球団編成部プロ担当を経て、2010年から2012年までは西武二軍監督を務めたが、本人の申し入れにより退任。その後、日本経済大学職員となり、2014年から2018年まで同大学硬式野球部の監督を務めた。現在は、埼玉県所沢市の野球教室「ヒーローズベースボールアカデミー」でコーチとして、子どもたちへの指導を続けている。

人物と愛用のグラブ

行澤氏は、長らく独身だった時期があり、選手名鑑に「花の独身貴族継続中」と記すなど、そのユーモラスな一面からファンやメディアから親しまれた。結婚は2006年で、多くの関係者から祝福を受けた。また、主婦顔負けの料理上手としても知られ、特にカレーの腕は仲間うちで評判だったという。大学時代からプロ入り後も長く愛用したグラブは「体の一部」と呼ぶほど大切にし、専用のバッグで持ち運んだ。この思い出深いグラブは後に、後輩であり名手として知られる辻発彦氏に譲られたというエピソードが残る。

主な記録と背番号

プロ野球における主な初記録は以下の通り。
初出場：1976年4月7日 対阪急ブレーブス前期1回戦（阪急西宮球場）、8回裏に遊撃手として出場
初安打・初打点：1976年4月29日 対近鉄バファローズ前期3回戦（後楽園球場）、8回裏に高木孝治投手から左越3点適時打
初先発出場：1976年5月12日 対ロッテオリオンズ前期6回戦（後楽園球場）、9番・遊撃手として先発出場
初本塁打：1977年5月11日 対ロッテオリオンズ前期6回戦（後楽園球場）、5回裏に安木祥二投手からソロ

また、1988年10月11日には、対南海ホークス戦で史上281人目となる1000試合出場を達成した。

背番号は、日本ハム時代に「4」（1976年-1979年途中）と「8」（1979年途中）、西武時代に「8」（1979年途中-1987年）と「22」（1988年）を着用。引退後のコーチ時代には「87」（1992年-2006年）と「81」（2010年-2012年）をつけていた。

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