街娼

街娼：社会と法の狭間で生きる者たち

はじめに

本稿では、街娼という社会現象について、その形態、歴史、合法性、リスク、そして現代社会における問題点などを多角的に考察します。街娼を取り巻く複雑な社会構造、そして個々人の生活実態を理解することで、より包括的な議論へと繋がることを目指します。

街娼の形態

街娼とは、路上や公共の場で客引きを行い、売春を行う形態です。個人売春を行う「立ちんぼ」と、売春の仲介を行う「ポン引き」の二つの形態が存在します。立ちんぼは、客を待つために目立つ服装をしていることが多く、性行為は顧客の車中や人通りの少ない場所、あるいは自宅やモーテルなどで行われます。

各国の合法性

日本の売春防止法では、公衆の面前で客引きや客待ちをする行為は違法とされています。具体的な解釈は裁判例にも依存しますが、一般的に、客待ちの意図が服装や行動から明らかな場合に違法と判断されます。近年は、地方自治体による迷惑防止条例でも、客引きや客待ち行為が規制されています。

一方、世界各国では売春の合法性に関する法制度が大きく異なります。例えば、イギリスでは売春自体は合法でも街娼は違法とされています。オーストラリアでは州によって規制が異なり、ニューサウスウェールズ州では一定の地域を除き合法とされています。ニュージーランドとドイツの一部の地域では合法とされていますが、規制の程度は地域によって異なります。アメリカ合衆国では全州で違法とされていますが、ネバダ州の一部地域では例外的に売春宿が認められています。オランダでは特定の区域に「tippelzone」と呼ばれる街娼が認められた区域が設けられています。

歴史

日本では、大正末期から「街娼」という言葉が使われ始め、戦後に一般化しました。戦後混乱期には、上野駅周辺や新宿駅周辺など、米軍将兵を相手に売春を行う「パンパンガール」と呼ばれる女性が多く存在し、性病の蔓延も社会問題となりました。1957年の売春防止法施行後も、街娼は存在し続け、新宿歌舞伎町など繁華街を中心に活動しています。近年では、ホストクラブの売掛金を稼ぐために街娼を行う女性も増えていると言われています。

リスク

街娼は、身体的・性的暴行の被害、金品強奪などのリスクに常にさらされています。WHOの調査では、バングラデシュの街娼の多くが警官や客からのレイプ被害を受けているという報告もあります。また、他の研究によると、多くの街娼が身体的暴行やレイプの経験を持ち、売春をやめたいと考えているという結果が出ています。しかし、これらの研究手法や中立性については議論があります。経済的な側面では、ポン引きの存在が収入に大きく影響し、逮捕のリスクも常に伴います。

COVID-19 の影響

COVID-19の世界的流行は、街娼にも大きな影響を与えました。人との接触を伴う職業であるため、売春活動は制限を受け、その数は一時的に減少しました。

まとめ

街娼は、複雑な社会構造と個人の生活状況が絡み合った問題です。法規制、経済状況、社会的な偏見など、多くの要因が影響しています。今後、より多角的な視点からこの問題に取り組み、関係者への支援や適切な政策を検討していく必要があります。街娼を取り巻く社会状況の理解を深め、より良い解決策を見つけることが重要です。 本稿がその一助となれば幸いです。

参考文献

渡辺洋二『街娼の社会学的研究』
光井雄二郎『白線』
* 宮台真司『まぼろしの郊外―成熟社会を生きる若者たちの行方』

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