街頭録音

街頭録音

『街頭録音』（がいとうろくおん）は、日本のラジオ界において歴史的な意義を持つ市民参加型のインタビュー番組です。この番組は、1945年9月29日にNHKラジオ第1放送で『街頭にて』という名称でスタートし、1958年まで続きました。

背景と沿革

この番組は、GHQ（連合国最高司令官総司令部）の指導に従い、米国での「Man on the Street」という形式を取り入れて、一般市民の声を広く届けることが目的とされました。1946年5月に『街頭録音』に名称が変更され、以降この名称で番組は継続されました。特にこの番組は、街頭で行う録音素材の一般的な呼称にもなりました。

番組の内容

『街頭録音』が放送されていた当初、アナウンサーの藤倉修一は東京の各地、特に日比谷や銀座、八重洲といった繁華街で通行人にインタビューを行いました。インタビューのテーマは多岐にわたります。1946年11月7日には戦災孤児の救護について、11月12日には新憲法についての市民の意見を募りました。こうしたテーマは、戦後の日本における社会の状況や意識を反映していました。

時には、マイクを隠して様々な場所でインタビューを行い、予期せぬ状況に遭遇することもありました。特に人気を集めたのは、1947年の「ガード下の娘たち」の放送で、当時の風俗に迫るインタビューが行われました。録音技術が未熟であったため、レコード式録音機を搭載した車が利用され、長いマイクケーブルを引きずって取材を行わなければならなかったことは、番組制作の苦労を物語っています。

1947年6月24日には、経済政策について新首相の片山哲を街頭に招き、市民と直接話し合う形式も試みられました。こうした新しい形態は、聴取者との距離感を縮める試みとして評価されました。さらに、番組フォーマットは全国各地でテーマに沿ったインタビューを行うものへと進化し、札幌や名古屋、広島など各地に出向いて参加者の意見を収集しましたが、特定の参加者による発言の妨害といった問題も発生し、最終的に番組は終了へと至りました。

番組の影響

『街頭録音』は、その後のNHKの社会番組に大きな影響を与えました。『時の動き』や『社会福祉の手引』など、多くの「社会番組」が制作される土台となりました。そして民間放送でも、この番組のスタイルを真似たさまざまな番組が誕生しました。例えば、『ラジオスケッチ』や『マイクは追う』などは、その影響を色濃く受けたものです。また、大阪の朝日放送では、『お笑い街頭録音』というパロディ番組も放送され、人気を博しました。

まとめ

『街頭録音』は、戦後の日本において一般市民の多様な意見を紹介し、社会の変化を映し出す重要な役割を果たしました。その形式は、以後のメディアコンテンツに多大な影響を与え、今に続いています。

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