衝心性脚気

衝心性脚気（しょうしんせいかっけ）とは

衝心性脚気は、ビタミンB1（チアミン）の欠乏によって引き起こされる心不全の状態を示します。この病状は、衝心脚気、脚気心、または脚気衝心とも称され、特に東洋人に多く認められます。衝心性脚気を理解するためには、その発症メカニズムや関連する病態を深く掘り下げることが重要です。

ビタミンB1の役割

心筋細胞では、長鎖脂肪酸が主なエネルギー源とされています。これらの脂肪酸が心筋細胞に取り込まれる過程では、CD36という糖タンパク質が重要な役割を果たしています。しかし、CD36欠損症という状態では、心筋細胞における長鎖脂肪酸の取り込みが著しく妨げられ、エネルギー源が脂肪酸から糖にシフトします。

この糖は解糖系を通じてピルビン酸に変換され、最終的にはTCA回路に供給され、エネルギーを生成します。興味深いことに、ピルビン酸をTCA回路に変換するためにはチアミンが不可欠です。そのため、CD36欠損症においてチアミンが不足すると、致命的な影響を及ぼす可能性があります。

発症メカニズム

CD36欠損症は、特に東洋人において高い頻度で見られ、その一因として東洋特有の遺伝的要因が考えられます。この症状にチアミンの欠乏が加わることで衝心性脚気が発症し、難治性の心不全を引き起こす可能性があります。そうしたことから、現代の医学では、心不全の診断にはこの病態を考慮することが非常に重要です。

現代におけるチアミン摂取

現代社会では、一般的にチアミンの欠乏はあまり見られないとされていますが、一定の条件下では注意が必要です。特に、チアミンの摂取量がエネルギー100kcalあたり0.16mgを下回る場合、脚気が発症するリスクが高まります。また、心不全治療に用いられる利尿剤が水溶性ビタミン、特にチアミンの排泄を促進するため、これも注意が必要です。

診断と治療

脚気心を適切に診断し、早期に治療を行うことで、ほとんどの場合は完治が期待できます。拡張型心筋症の患者においては、CD36欠損症またはチアミン不足を適切に評価することが必要です。疑わしい場合には、診断的治療を視野に入れることも有用です。

結論

衝心性脚気は、ビタミンB1の欠乏に起因する心不全であり、適切な診断と治療により改善する病態です。心不全に関連する病態についての理解を深め、早期の対応が求められます。

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