表券主義

表券主義（Chartalism）

表券主義は、国家が自国の財やサービスとの交換を可能にするために、法律の下で税金の支払いを一義的に認める貨幣の理論です。この理論では、貨幣の価値は物々交換から自然に発生するのではなく、経済活動を管理しようとする国家の試みから来ると考えられています。このアプローチによれば、政府が発行する非換金性の通貨（法定通貨）は、税金を支払うために用いられることでその価値が担保されます。

表券主義の提唱者であるドイツの経済学者ゲオルク・フリードリヒ・クナップは、1905年に発表した『貨幣国定学説』の中でこの概念を確立しました。彼は、貨幣が商品貨幣ではなく「法律の創造物」であるとし、金本位制に対する代替の貨幣の考え方を提示しました。クナップの理論は、国家の信用とその信用に基づく法的な枠組みが、貨幣の価値を支えていることを強調しています。

この理論は、いくつかの現代の経済学者によって支持されてきました。例えば、アダム・スミスやカール・マルクスといった古典派経済学者の著作にも、税金によって駆動される貨幣の考え方が見られます。Alfred Mitchell-Innesは、貨幣を交換手段としてではなく、政府が課税によって回収できる負債として存在することを強調しました。

さらに、ジョン・メイナード・ケインズも表券主義に言及し、国家の役割が重要であることを示しました。アバ・ラーナーは、1947年に「国家の創造物としての貨幣」について言及し、政府がインフレや恐慌を回避するための措置をとる必要があると論じました。

現代での応用と評価

たとえば、日本の円の紙幣や硬貨は、法律によって特定の財やサービスとの交換に使用されることが認められています。このように、政府が国内流通に限った貨幣が法的に認知されることで、貨幣の価値は確立されます。しかし、この信用は政府が税をその貨幣でのみ受け付けることに依存しています。

表券主義の利点は、金本位制に比べて政府が自由に経済を調整できる点にあります。例えば、デフレが進行する場合には国債を発行し、インフレを抑えるための措置も取りやすくなります。

ただし、表券主義には欠点も存在します。国際貿易においての決済が必要な場合、管理通貨制度が整っていなかった時代には支障が生じることもありました。しかし、今日では世界的に管理通貨制度が普及しており、その点での不備は解消されています。

表券主義の対照的な理論である金属主義は、貨幣の価値を特定の物質（ゴールドなど）の量に基づいています。これに対し、表券主義では国家の信用そのものが貨幣の価値を支える要素となります。

最後に、国家の信用は、国民に対し生命と財産を守る使命を果たすことによって築かれます。その信用が揺らぐと、経済に対する不安や不満が高まり、場合によっては社会不安を引き起こすこともあります。このように、表券主義は経済政策において重要な理論であり、現代の経済学においてもその価値が認識されています。

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