表面波マグニチュード

表面波マグニチュード（Ms）とは

表面波マグニチュード（Surface wave magnitude, Ms）は、地震によって発生する表面波を観測し、その振幅や周期、震央距離といった要素から地震の規模を表すマグニチュードを算出する指標です。1946年にベノー・グーテンベルグによって、ローカルマグニチュード（リヒタースケール）を基に考案されたのが始まりです。

歴史

1935年にチャールズ・リヒターがローカルマグニチュードを提唱して以来、マグニチュードと表面波の関係に関する研究が進められてきました。当初、ローカルマグニチュードは地震計の振幅と震央距離に基づいて算出されており、表面波は直接的な計算には用いられていませんでした。

1936年、グーテンベルグとリヒターはローカルマグニチュードの適用条件を補足し、表面波の周期が約20秒で、震央距離が20°以上の場合に適用可能としました。そして、これらの条件から大きく外れる場合は、ローカルマグニチュードで算出した値が適切ではないと指摘しました。また、震央距離が20°以上であれば、表面波の振幅と周期が一次方程式の関係にあることを示しました。

1945年、グーテンベルグは表面波の周期から振幅が算出できる点に着目し、表面波の振幅と震央距離からマグニチュードを測定できることを提唱しました。この際、ローカルマグニチュードの特性を踏襲し、観測地点ごとの補正を含む対数スケールで計測式を定義し、計測値をローカルマグニチュードの近似値にするために定数で補正しました。この計測式は、表面波の周期が約20秒、震央距離が20°以上という条件付きで使用されました。

1962年には、ヴィット・カールニクがグーテンベルグの計測式を改良し、表面波マグニチュードの評価式を定義しました。この評価式は、震央距離が20°から160°の範囲、震源の深さが50km以内という条件で使用されました。1967年、国際地震学・地球内部物理学協会（IASPEI）は、震源の深さが50km以内の浅い地震のマグニチュードを測定する標準的な手法として、カールニクの定義した評価式に基づく表面波マグニチュードを推奨しました。

中国では1999年から地震規模の分類に用いられていましたが、2017年にモーメントマグニチュードがより正確な指標として採用され、国家基準は更新されました。

定義

表面波マグニチュード（Ms）は、以下の式で定義されます。

math
M_s = \log \left(\frac{A}{T}\right)_{\text{max}} + 1.66 \cdot \log \Delta + 3.3


ここで、

A は表面波の変位（µm）
T は表面波の周期（秒）
* Δ は震央距離（角度）

を示します。定数部分は、先行して定義されたローカルマグニチュードとの整合性を取るための補正値です。表面波マグニチュードで計測した値は Ms と表記されます。

特性

表面波マグニチュードは、ローカルマグニチュードの特性を受け継ぎ、地震のエネルギー量の増加に対して対数スケールで値が増加します。そのため、同一の地震を表面波マグニチュードとローカルマグニチュードで計測すると、ほぼ同じ値が得られます。

ローカルマグニチュードと異なり、観測地点ごとの補正は必要ありませんが、大きな地震ではマグニチュード値が収束する傾向があります。そのため、速報的なマグニチュードの報告には用いられますが、巨大地震など正確なマグニチュードを報告する際には、より精度の高いモーメントマグニチュードが用いられるようになっています。

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