袈裟

袈裟（けさ）について

袈裟（けさ）は仏教僧侶が身に着ける布製の衣装で、梵語の「カーシャーヤ」（壊色・混濁色）が由来です。この衣服は、僧侶が持ち物を持たない一環として、捨てられた布や汚れた布を集めて作られました。仏教において、簡素さを象徴する袈裟は、僧侶の身分を示す重要な役割を果たしています。

歴史的背景

袈裟の起源はインドの仏教にあります。ここで出家僧侶は、私有物を持つことを禁じられており、そのために使い古された布を用いていました。これらの布は、しばしば草木や金属の錆で染められ、特有の黄土色や青黒色を呈していました。この色の由来が「壊色」と呼ばれるものであり、袈裟そのものに深い意味を持たせています。

袈裟は通常、3枚の布から成り立っています。それぞれの役割は、下着としての「安陀会」、普段着の「鬱多羅僧」、儀式用の「僧伽梨」です。これらは「三衣一鉢」と呼ばれ、出家が必要とする基本的な装備品です。仏教が北に伝わる過程で、袈裟は次第に装飾的な要素を持つようになり、僧侶を特定する衣装として進化しました。日本に伝来した際には、色や布地の意匠が多様化し、僧侶の位階や特権を示すものになりました。

特に江戸時代には、天皇の許可が必要な「紫衣」や「紫袈裟」があり、一般の僧侶は黒い衣を身につけることで「黒衣」と呼ばれていました。

袈裟の形態と着用法

袈裟は、かつては全身を覆うように着用されていましたが、現在では右肩を露出させる「偏袒右肩」（へんだんうけん）の着用が一般的です。これは仏陀への崇敬を表し、右肩を出すことで敵意がないことを示す意味もあります。

袈裟の形状には多くのバリエーションがありますが、いずれも小さな布をつなぎ合わせて構成されています。布は「条」と呼ばれ、縦に組み合わせた布を横に縫い合わせることで製作されるのが一般的です。条数は五条、七条、九条が一般的で、条数が多いほど高貴とされます。

また、袈裟が水田のように見えることから「福田衣」とも呼ばれています。歴史的には、釈迦がこのような衣装を定めたという伝説もあるほどです。

袈裟の持つ象徴性

袈裟は、禅宗において特に重要な意味を持ち、師匠から弟子への伝承を示す証とされています。師匠が弟子の修行を認めた際に、祖師からの袈裟や持鉢を与えることで正式な継承が行われます。このため、袈裟は強く象徴的な意味を持ち、時には monetary の価値を超えて贈られることもあります。

さらに、輪袈裟という簡易的な袈裟を、僧侶だけでなく在家の信徒も使用することがあります。法会に参加する際には、多くの信徒がこの袈裟を用いて自己の信仰を示します。

名前の由来

興味深いことに、袈裟に関連した名前も存在します。「袈裟雄」や「袈裟男」など、出生時に臍の緒が絡まって生まれた子が、この衣装を着ているかのような状態にあったことに由来しています。このような珍しい理由から、特別な名前が付けられることがあります。

一般的に、僧侶が袈裟を「着る」とは言わず、「着ける」と言います。この言葉の使い方の違いにも、仏教の教義や伝統が根付いていることを感じ取ることができます。

袈裟はただの衣服ではなく、僧侶のアイデンティティをも形作る重要な要素であり、仏教徒にとってその意味は深いものです。

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