袙

袙（あこめ）は、装束において肌着と表着の間に着用する内着の一種で、別名「衵」とも表記されます。正式名称は袙衣（あこめぎぬ）といい、「相籠めて」着ることからこの名が付いたとされています。

概要

袙は、主に男性が束帯装束に着用するもので、明治以降は皇族のみが着用します。ただし、例外として宮中に仕える少女が成人用の袿（うちぎ）の代用として複数枚重ねて着用することがありました。特に、砧打ちや板引などの加工を施した袙は「打衣」（うちぎぬ）と呼ばれます。

形状

袙の形状は、着物の原則に従い身頃は二幅で構成され、垂領（現在の着物と同じ前で打ち合わせるタイプ）となっています。袖は広袖と呼ばれる袖口が広い形状で、袍（ほう）などとは異なり布一幅分で作られています（袍は一幅半）。脇は縫われておらず（少女用のものは脇を縫う）、腰までの丈で作られています。材質は平絹または綾の紅色ものが用いられ、袷仕立てにするのが基本です。

ただし、季節に応じて調整が加えられることもありました。夏場は寒暖調節のために裏地を剥いだ「ひへぎ」と呼ばれる仕立てにしたり、冬は綿入れ仕立てにすることもありました。

男子の袙は紅色が基本ですが、年齢によって「染袙」と称して萌黄・蘇芳・薄色などを用いることもありました。また、少女が着用する場合は、袿に準じて襲の色目を構成しました。

色目について

袙の色目は、着用者の身分や年齢、季節などによって細かく定められていました。例えば、天皇は白や黄色の袙を着用し、皇太子は黄丹色の袙を着用しました。また、夏には薄色の袙を着用し、冬には濃い色の袙を着用するなど、季節感を取り入れた色合わせも行われていました。

関連項目

* 襲の色目

袙は、装束の中でも比較的自由度の高い衣服であり、着用者の個性を表現する上でも重要な役割を果たしていました。現代では目に触れる機会は少ないですが、日本の伝統文化を理解する上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。

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