被災者生活再建支援法

被災者生活再建支援法について

被災者生活再建支援法（平成10年法律第66号）は、自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた人々を支援することを目的とした日本の法律です。この法律は、経済的な理由などにより自立した生活の再建が困難な被災者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用し、生活再建支援金を支給するための措置を定めています。

成立の背景

この法律は、1995年の阪神・淡路大震災を契機に制定されました。震災後、住宅を失った被災者から公的な補償を求める声が高まりましたが、当時の政府は私有財産への公費投入に消極的でした。しかし、被災者の支援を求める運動が広がり、1998年、各党の合意を経て議員立法として成立しました。これにより、従来義援金に頼っていた被災者支援が、国策として行われるようになりました。

制度の概要

本法律は、自然災害により住居が全壊、半壊、または大規模な損害を受けた世帯を対象としています。具体的には、以下のようなケースが該当します。

全壊
半壊、または住居の敷地に被害が生じ、住居を解体せざるを得ない場合
災害により危険な状態が継続し、長期間住居に居住できない場合
半壊し、大規模な修繕が必要な場合

これらの状況に該当する場合、被災者は生活必需品の購入や引越し費用として、最大100万円の支援金を受け取ることができます。さらに、2004年の法改正により、住宅の解体費用や住宅ローンの利子など、住宅関連費用として最大200万円の支援金が支給される制度も創設されました。この法律における「自然災害」は、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの異常な自然現象によって生じる被害を指します。

2007年11月の法改正では、申請手続きが大幅に簡略化され、住宅の被害状況や再建方法に応じた定額給付方式に変わりました。これにより、以前は制限されていた支援金の使途も自由になり、年齢や収入要件も撤廃されました。

東日本大震災における動向

2011年の東日本大震災では、本法律が注目されることになりました。津波により甚大な被害を受けた地域では、罹災証明書の発行手続きを簡素化し、航空写真や衛星写真で家屋の流失が確認された地域では、一律「全壊」扱いとする措置が取られました。また、液状化現象による被害が大きかった地域では、建物の傾きや基礎の沈み込みを基準に追加し、被災判定の基準を緩和する救済措置が発表されました。

自然災害の解釈と原発避難者の法適用についての論争

被災者生活再建支援法は、自然災害による長期避難世帯も対象としていますが、福島第一原子力発電所事故による長期避難者への適用は認められていません。この「自然災害」の解釈を巡り、国、福島県、浪江町、日本弁護士連合会などの間で論争が起きています。国は、原発事故は自然災害との因果関係が薄い人災であるとし、東京電力による賠償で対応すべきとしています。しかし、日本弁護士連合会は、原発事故の原因が地震・津波であると国会事故調が結論付けていることから、原発事故避難者にも支援法を適用すべきだと主張しています。また、福島県内の自治体も、原発事故による長期避難者を支援対象に含めるよう国に要望しています。

原発避難者への適用を求める主な主張

原発事故は地震・津波が原因であり、自然災害の一環として捉えるべき
避難生活の長期化により生活資金が枯渇しており、支援が必要
支援法を柔軟に解釈し、早期の支援金支給を求める

国の主張

原発事故は人災であり、東京電力による賠償で対応すべき
支援対象を拡大すると財源が不足する
自然災害との因果関係が薄い

結論

被災者生活再建支援法は、自然災害によって生活基盤を失った人々を支援するための重要な法律です。しかし、原発事故による避難者のように、制度の適用範囲を巡る課題も存在します。今後、これらの課題を解決し、より多くの被災者が適切に支援を受けられるように、制度の見直しや法改正が求められています。

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