被疑者ノート

被疑者ノートとは

被疑者ノートとは、逮捕され勾留されている被疑者に対し、弁護士が提供するA4サイズの冊子形式のノートです。

概要

被疑者ノートは、主に以下の目的で使用されます。

取り調べの可視化: 取り調べの日時、内容、担当官の名前などを記録することで、取り調べの透明性を高めます。
権利の保護: 取り調べ中の不当な言動（暴行、脅迫、誘導など）を記録することで、被疑者の権利侵害を防止します。
証拠の保全: 裁判において、取り調べ状況の証拠として提出される可能性があります。

ノートには、日々の取り調べ内容、暴行や自白の強要の有無、調書の訂正に応じたか否かなどを詳細に記録します。また、記入例が記載されているため、初めて使用する被疑者でも容易に記入できます。

さらに、弁護士との接見禁止に対する不服申し立て（準抗告申立）に必要な書類も添付されており、必要事項にチェックを入れるだけで裁判所への申し立てが可能です。

歴史

被疑者ノートは、2003年秋に大阪[[弁護士会]]の刑事弁護委員会が中心となって作成されました。きっかけは、大阪府警が取り調べ状況を記録した日誌を作成していることを知った同委員会の弁護士が、被疑者側も取り調べ官の様子を記録することを提案したことにあります。

裁判での利用

2003年に発生した殺人未遂事件の公判において、被疑者ノートが裁判で採用された事例があります。この事件では、被告人が調書の内容と法廷での供述が異なっていたため、裁判所は被疑者ノートの内容を重視し、捜査側の誘導があった可能性を指摘しました。その結果、裁判所は被告人の法廷での供述を採用し、求刑よりも軽い判決が言い渡されました。

被疑者ノートが証拠として提出されることで、警察官や検察官による取り調べにおいて作成された供述調書の任意性が否定される可能性があります。これにより、被疑者に不利な証拠が減少し、より公正な裁判が期待できます。

注意点

被疑者ノートは、被疑者自身が作成するため、内容が改竄される可能性も指摘されています。そのため、裁判所が常に被疑者ノートの信用性を認めるわけではありません。しかし、客観的な証拠と合わせて提出することで、その信用性を高めることができます。

まとめ

被疑者ノートは、被疑者の権利を守るための重要なツールです。取り調べの可視化、権利の保護、証拠の保全など、様々な目的で活用されています。しかし、改竄の可能性も考慮し、客観的な証拠と合わせて利用することが重要です。

関連項目

勾留
被疑者
当番弁護士制度

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