被覆アーク溶接

被覆アーク溶接に関する詳細

1. 被覆アーク溶接とは

被覆アーク溶接は、手作業で行われる溶接の一形式で、溶接棒という特殊な棒を用いる方法です。この手法は、溶接をする際に必要なアークを生成し、金属の接合を行います。別名、手棒溶接や手溶接とも呼ばれることがあります。一般的には、初めて溶接を行う人でも比較的容易に扱える技術として知られています。

2. 溶接のプロセス

この技法では、溶接棒が母材と呼ばれる金属部品との間にアークを発生させます。アークの熱によって母材が溶けて、金属の溶融池が形成されます。溶接棒が加熱されることで生じた金属の滴（溶滴）は、この溶融池に融合し、強固な結合を生み出します。この時、重要な役割を果たすのが溶接棒の被覆に使われるフラックスです。

2.1 フラックスの働き

フラックスはアークの温度によって分解され、ガスとなることでアークや溶融池を外部の大気から保護します。これにより、アークが安定化し、より効率的な溶接が可能になります。また、溶融したフラックスはスラグという固体の物質となり、溶接された金属部位をスパッタや外部からの汚れから守る役割もあります。フラックスは、母材表面の不純物を取り除く清浄作用も持つため、より強固な接合が実現されます。

3. 機材と技術

被覆アーク溶接は、比較的単純な装置で行えるため、多くの産業で利用されています。日本国内では、特に交流垂下特性電源の溶接機が多く使われており、さらに直流やインバーター制御のもの、動力発電機式や鉛蓄電池式の溶接機も利用されています。この方法は風に強いため、屋外での作業にも向いています。

4. 被覆剤の管理

被覆アーク溶接に用いられる溶接棒の被覆剤は、湿気に弱い特徴があります。このため、湿気を含むとアークが不安定になったり、内部に気泡が入る問題が起こりやすくなります。特に、水素を内部に含むことがあり、水素脆性によって金属が割れやすくなるリスクも伴います。

4.1 適切な保管方法

そのため、溶接棒は乾燥している貯蔵施設で保管し、使用前には適切な温度で乾燥する必要があります。一般的には70～100℃で30～60分、低水素系の溶接棒は300～400℃での乾燥が推奨されます。また、一度乾燥した低水素系溶接棒はすぐに使わない場合、保管容器に入れて適切な温度を保つことが求められます。使用時の大気放置時間も2～4時間を超えないようにする必要があり、過ぎると再乾燥が必要となります。

5. まとめ

被覆アーク溶接は、その操作の簡便さと効果的な結合技術から、広範囲な産業分野で利用されています。特に、アークによって高温で金属を溶かし、フラックスの保護機能により安定した溶接が行える点が魅力です。溶接剤の保管や管理についても注意が必要ですが、正しく活用すれば非常に強力な溶接方法となります。

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