裁判官 (国際司法裁判所)

国際司法裁判所の裁判官について

国際司法裁判所（ICJ）は、国際的な法的紛争を解決するための機関として重要な役割を果たしています。本項では、ICJにおける裁判官たちの任命や任期に関する詳細、選出方法、そして裁判官の特権に焦点を当てて解説します。

裁判官の任命条件

国際司法裁判所は、15名の裁判官で構成されています。ICJ規程第2条によると、裁判官に選ばれる人物は高い倫理性を持ち、自国の最高の司法官としての資格を有するか、または国際法の分野で著名な法律専門家でなければなりません。また、裁判官は自国政府からの指示を受けることや、政治職や行政職に就くことは禁止されています。さらに、裁判官は外交特権に似た特権を享受し、その独立性が確保されています。

選出方法

裁判官は個人の資格により選出されますが、同じ国籍の者が2名以上選ばれることはありません（ICJ規程第2条、ICJ規程第3条）。裁判官の選出は、国際的な法の観点からも多様性が重視されており、世界の主要な文明と法律システムが表現されるように選出されます。そのため、西欧からは5名、東欧からは2名、中南米からは2名、アジアとアフリカそれぞれから3名が割り当てられる慣例があります。ただし2018年の選挙では、イギリス出身の裁判官の後任にレバノン出身の裁判官が選ばれたため、西欧4名、アジア4名となりました。

裁判官の候補者は、各国からの国別裁判官団によって指名されます。この団体は、国籍の候補者を最大4名まで指名でき、その中から国連総会や国連安保理での選挙を通じて裁判官が選ばれます（ICJ規程第10条）。安保理での選挙では常任理事国の拒否権が使われることはありませんが、過去の慣行として常任理事国の国籍を持つ候補者が当選していたこともありました。

裁判官の任期と役職

裁判官の任期は9年であり、その間に3年ごとに5名が改選されます。再任も可能ですが、選挙によって後任者が決まる場合は前任者の残任期間が引き継がれます（ICJ規程第15条）。また、裁判長と副裁判長は任期3年で選出され、裁判官による選挙で決定されます（ICJ規程第21条）。

忌避の規定

裁判官は利害関係を有する裁判例に関し、自ら回避を申し出ることができる仕組みが整っています。しかし、過去に特定の裁判官に対する忌避申し立てが行われたケースもあります。これらの申し立ては、裁判官が就任前に自国政府代表としての発言を理由にすることが多いです。ICJは、こうした忌避の申し立てを否決することが一般的で、明確な理由を示さずに判断することが多かったため、批判の対象となることもあります（ICJ規程第17条第2項）。

アドホック裁判官の制度

国際司法裁判所では、紛争当事国の国籍を持つ裁判官が不在の場合、その国が単独で出席する裁判官を指名することができます。この特定の裁判官は、アドホック裁判官と呼ばれ、自国政府の立場を代弁すると見なされることから批判も存在します。しかし、この制度がなければ、自国籍の裁判官に対する安易な忌避につながるとの意見もあり、多様性を持つ裁判仕組みを反映するうえで重要視されています。

現職の裁判官

裁判官の任命や選出方法に関する内容は、国際司法の公正を保証するために極めて重要です。裁判官選出の背後にある理論や実務が、今後も国際社会における法の支配を強化する基盤となることが期待されます。

参考文献

• - 杉原高嶺、水上千之、臼杵知史、吉井淳、加藤信行、高田映『現代国際法講義』有斐閣、2008年。
• - 筒井若水『国際法辞典』有斐閣、2002年。
• - 山本草二『国際法【新版】』有斐閣、2003年。

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