裁判所速記官

裁判所速記官とは

裁判所速記官は、法廷で行われる速記事務を担当する裁判所の職員です。主な任務は、刑事や民事の重要かつ複雑な事件において、被告人や証人の発言を逐語的に記録することです。具体的には、法廷での発言内容だけでなく、身振りや手振りも含めて詳細に記録します。こうした記録は、専用のタイプライターを使用し、速記符号という特別な記号で行われ、法廷が終了した後にこれを反訳して正式な文書を作成します。

職務の詳細

裁判所速記官は、議事録を正確に作成するために高い集中力とタイピングスキルが求められます。法廷では、速記用の特別なタイピング技術が使用され、迅速に言葉を記録することが必要です。法廷の環境は緊張の中で行われるため、裁判所速記官の役割は非常に重要です。記録が正確でなければ、裁判の公正さにも影響を及ぼすため、速記官は責任を持って職務をどうこなさなければなりません。

採用プロセス

裁判所速記官を目指す者は、まず裁判所速記官研修生採用試験を受ける必要があります。この試験は17歳から20歳の若者を対象にしており、合格後は裁判所事務官として採用されます。その後、裁判所書記官研修所で2年間の研修を受け、最初の段階として裁判所速記官補に任命されます。実務経験を積んだ後、試験に合格することで正式な裁判所速記官に昇進する道が開かれます。しかし、近年は人材確保の困難さや裁判案件の増加により、新規採用が停止されており、速記官の数が激減する事態が続いています。

歴史的背景

裁判所速記官の制度は、戦後の日本において新たに設立されました。この制度の発足は、GHQからの勧告により、公判期日の間隔を改善するために専門の速記官が必要だとの指摘から始まりました。1951年に最初の速記官の養成が行われ、当初は10名の1期生が誕生します。1957年には裁判所法の改正により、裁判所速記官と速記官補の地位が正式に設立されました。

現状と課題

しかし、制度が始まった当初は2300人の採用が見込まれていましたが、1964年以降は935名を超えることはありませんでした。最高裁判所は1993年から速記官制度の見直しを始め、新規採用は1997年に停止されました。これにより、裁判所速記官の数は自然減による退職も含め、2006年までに300人程度に減少しました。最高裁の見解は、新規養成の停止が決定してから一貫して同じであり、弁護士団体などからの再開要望に対しても変わらない姿勢を示しています。

裁判所速記官の制度が直面している課題は、速記用特殊タイプライターの供給問題や職業病のリスク、録音技術の進歩など多岐にわたります。今後、法廷速記官制度のあり方について、再評価や改善策が求められるでしょう。

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