装甲回収車

装甲回収車（ARV）

装甲回収車（そうこうかいしゅうしゃ、Armoured Recovery Vehicle, ARV）は、戦場において破損した戦車やその他の軍用車両を回収するための専用車両です。回収を行うタイプには、戦車回収車（Tank Recovery Vehicle, TRV）や装甲戦車回収車（Armoured Tank Recovery Vehicle, ATRV）などがあります。さらに、戦車のエンジン交換や整備を行える機能を持つ車両は、装甲修理回収車（Armoured Repair & Recovery Vehicle, ARRV）とも称されます。

歴史

装甲車両を回収する任務は、第一次世界大戦以前から実施されており、その当時から装甲車両には車両牽引用のタグロープや牽引具が必需品とされていました。戦車が実戦に投入されるようになると、その重さや複雑な機構によって、機械故障や地盤による擱坐で行動不能になるケースが多発しました。このため、戦車の回収や修理を行うための装備の重要性が増し、各国は大型の半装軌車やトラックを整備しました。

第二次世界大戦の時期には、戦車の重量が急速に増加し、従来の回収装備では対応が難しくなりました。その結果、戦車を改造した回収戦車が必要とされ、また、現地で応急的に作成された回収車両も多く存在しました。戦後も、さまざまな装甲戦闘車両が開発され、それらを支援するための装甲回収車も多種多様に進化しました。これにより、機械化部隊の運用に欠かせない装備となりました。また、退役後は、民間で重量物牽引車やクレーン車として再利用されることもあります。

構造

近年の装甲回収車は、多くが特定の戦車の派生型として開発されており、部隊全体の機動性向上を図るための設計がなされています。また、同一の車体を持つことで、部隊内の予備部品の不足時に相互保守が可能です。装甲回収車として設計された車両は、通常、砲塔を取り外し、密閉型の戦闘室を搭載しており、吊上げや索引の設備を備えています。安定性を向上させるために駐鋤が装備されることも一般的です。

車両の修理や整備を行うため、多くのスペアパーツが搭載されており、予備のエンジンを運搬するための架台を設置しているものもあります。装甲修理回収車には、溶接機材やコンプレッサーといった各種整備機器が搭載されています。

特殊型

装甲回収車には、特定の状況に対応するための特殊な装備が施されたモデルも存在します。例えば、BARV（Beach Armoured Recovery Vehicle）は、上陸作戦時に使用され、波打ち際での車両回収や小型舟艇の離岸を支援します。砲塔を除去した戦車の車体は、水密性を向上させ、水上での作業が可能なように設計されています。

車両の一部は、LTVR（Landing Vehicle Tracked Recovery）として開発され、特に水陸両用車両部隊に関連し、海岸での回収作業や車両整備に用いられます。これらの特殊型装甲回収車両は、特定の運用条件を満たすために設計されており、その機能は戦場における戦闘能力を大きくサポートしています。

結論

装甲回収車は、戦場での戦車やその他の装甲車両の回収・修理を行うための重要な軍用車両です。その歴史的背景や多様な構造は、戦闘における重要性を証明しています。そのため、現代の軍事作戦においても欠かせない装備として位置づけられています。

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