裏切りの荒野

裏切りの荒野：愛と裏切りのマカロニ・ウェスタン

1967年公開のイタリア製マカロニ・ウェスタン映画『裏切りの荒野』（原題：L'uomo, l'orgoglio, la vendetta）は、プロスペル・メリメの小説『カルメン』を大胆に西部劇の世界に再解釈した作品です。セビリアの工場警備員であるホセと、自由奔放なロマの女カルメンの出会いを起点に、愛と欲望、裏切りと復讐が渦巻く、壮絶な物語が展開されます。

物語は、セビリアの工場で警備員として働くホセが、仕事を求めてきたカルメンを工場内に招き入れることから始まります。しかし、カルメンは他の女性と争いになり、相手を重傷に負わせてしまいます。警察に突き出されることになったカルメンを護送することになったホセですが、カルメンの策略によって逃げられてしまい、彼は懲罰を受け、兵卒に降格されてしまいます。

その後、ホセは偶然にも大佐の屋敷で行われたパーティーでカルメンと再会します。カルメンへの未練を断ち切れないホセは、彼女を警察に引き渡そうとしますが、カルメンの甘い言葉に惑わされ、一夜を共にすることになります。しかし、翌朝、カルメンは冷酷にもホセを突き放し、二人の関係は終わりを迎えます。

夜警の任務中もカルメンのことを忘れられないホセの前に、再びカルメンが現れます。密輸品の持ち出しを手助けしてほしいというカルメンの頼みは、ホセの葛藤を呼び起こします。最初は拒否するホセでしたが、カルメンの激しい感情に押され、密輸を黙認してしまうのです。

カルメンはホセに報酬を渡し、別れを告げます。伯爵夫人からの仕事を得たと語るカルメンは、ホセを伯爵夫人の屋敷に案内しますが、それは二人の別れを意味していました。しかし、ホセはカルメンの後を尾行し、彼女の仲間ドロテアの家に侵入します。そこには、ホセの上官である中尉がおり、カルメンを巡って激しい争いが勃発。ホセは中尉を殺害し、逃亡者となります。

ホセはカルメンの仲間であるダンクロイとレメンダードに匿われます。行き場を失ったホセは、カルメンと共に新たな人生を歩むことを決意し、カルメンたちが計画している金塊強奪計画に参加することにします。ホセは、犠牲者を出さない巧妙な計画を立てますが、カルメンの夫である脱獄囚ガルシアが計画に加わってきます。

ホセは、金塊を運ぶイギリス外交官の馬車を巧みに足止めし、召使として潜り込んでいたカルメンと共に金塊を奪取することに成功します。しかし、ガルシアは外交官の護衛を殺害し、計画は狂ってしまいます。さらに、ガルシアは負傷したレメンダードを殺害し、ホセの怒りに火をつけます。

ガルシアはカルメンに食料と衣服の調達を命じ、カルメンがいなくなった隙に金塊を独り占めしようとホセを襲いますが、ホセはガルシアを殺害します。ダンクロイと共に山を下りたホセたちのもとにカルメンが合流します。闘牛士のルーカスから金と食料を受け取ったカルメンは、彼のもとへ行くようホセを誘いますが、ダンクロイは警察の追跡を理由に反対します。

カルメンは海岸でアメリカ行きの船で落ち合う約束をしますが、約束の時間に現れません。ダンクロイは、カルメンがルーカスと恋仲になり、約束を破ったのだと告げます。しかし、ホセはカルメンを諦めきれず、金塊をダンクロイに譲り、一人でカルメンのいる町へ向かいます。

そこでホセは、カルメンに真実を突きつけられます。カルメンは、誰にも愛されていないと告白し、ホセを拒絶します。それでもカルメンへの愛を語るホセですが、カルメンの冷酷な拒絶を受け入れられず、ついには彼女を殺してしまうのです。

警察に追われたホセは海岸へ逃げ込みますが、船は既に出ており、警察に射殺されます。ホセとカルメンの激しい愛憎劇は、悲劇的な結末を迎えるのです。この映画は、マカロニ・ウェスタン特有のスタイリッシュな演出と、人間の業を深く描いた物語で、多くの観客を魅了しました。

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